第9話★

 科学技術が発達した現代においても魔導は廃れてなかった。魔導は、魔法とも呼ばれ、その存在自体は認識されている。

 しかし、その魔導を扱える者、いわゆる魔導師たちは、その他大勢の一般人に紛れ、ひっそりと暮らしていることが多い。

 俺たち桂の一族もそんな魔導師の一族だ。


 母さんは、魔導を使った薬、魔導薬の生成を得意とする。引っ越す前、母さんの薬は近所の人やその親戚たちの間では人気が出ていた。なんにでも効くみたいで、子どもからお年寄りまで使っていたみたいだ。引っ越した後は、ネットショッピングで今まで使っていた人たちに郵送することにしているらしい。

 父さんも魔導が使えるし、ゆめも最近魔導が使えるようになったらしく、俺によく見せに来てくれる。


 しかし、こんな魔導一家に生まれながら、俺だけ唯一魔導が使えなかった。なんでも魔導師には生来的に魔力が宿っているそうだが、俺には魔力が宿っていないらしい。

 生まれたばかりの俺を母さんが病院のベッドで抱き抱えている写真を見たことがあるから、俺が母さんと父さんの子どもであることは間違いない。母さんたちに一度、なぜ俺にだけ魔力がないのか小学生の頃に問いかけたことがあるが、原因はわからないとのことだった。

 まあ実際、魔導が使えないからといって困ることはない。そのため、中学に上がるころには、なぜ魔導が使えないのかについて気にならなくなっていた。

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