アオイロノペン

第1話 驚き( 白梅 )

君はそんなにも

美しかっただろうか

雪解けのころ

咲いたとはいえまだ固く

断ち切られた枝は痛々しくも

鋭く尖って視線を拒んでいたのに


いつからそんなふうに

やわらかく笑うようになったのだろう

まるくふくらんだ蕾は愛らしく

白い花は誇らしく

芽吹いた葉は若やいで

陽の光をうけて立つ


いつからそんなふうに

しなやかに強くなったのだろう

春まだ浅きこのごろの

身のすくむような冷たい雨の

そのなかにあってさえ

きらめく玉のような雫を

惜しげなく枝に葉に連ならせて

灰色の空のなかに立つ


君はそんなにも

美しかったろうか

白い花

立ち昇るように

夜に立つ





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る