第38話 感謝しかないです
瑛太side……★
「いやー……明日花ちゃんも葉月さんも目玉が飛び出るほど美人でビックリしたよ! え、葉月さんは彼氏募集中なの? こんなお綺麗なのに? 回りにいる男共って腑抜けばかりだね。俺だったら絶対に放っておかないなー、こんな美人!」
「やーん、瑛太先輩ったらお口が上手いですね。瑛太先輩こそ男らしい顔立ちだし、面白いし。彼女がいないなんて信じられないです」
アハハ、オホホと初対面の二人が場を盛り上げようと必死に場を繕っていた。
本来ならば一番回すはずだった壱嵩がポンコツになってしまったせいで、俺達が頑張るしかなかったのだ。
神妙な顔付きで黙り込んだ壱嵩に、明日花ちゃんもオロオロと心配そうに覗き込んでいるし。
(しまったー! 余計なことを言い過ぎた! そう、壱嵩自身も気にしいの性格なんだよ! 細かい割にはアッサリした性格だから忘れていたけど、自分の過ちをとことん気にする面倒な性格だったわ‼︎)
それに実際、彼女の明日花ちゃんを見て過保護になる気持ちも理解できた。
これは相当、惚れ込んで大事にしてるな。
まだ知り合って数十分くらいだが、それでも彼女がどんな人間なのか俺でも分かった。
優しい子。しかもちょっとした事にも気付くほど、回りのことをよく見ている子だった。
この子が集中力がなかったり飽きっぽい性格になるのは、逆に色んなことが見え過ぎてストレスになっているせいだろうと勝手に推測してしまったが……。
(そりゃ、守りたいと思っちゃうよな……。明日花ちゃんにとって少しでも生きやすい世界になるようにって思っちゃうわ、これは)
そして明日花ちゃんが連れてきた美人、葉月さんも壱嵩と同類のように見えた。この子もこの子で明日花ちゃんのことが好きなオーラが溢れている。
何と罪深い女なんだ、明日花ちゃん。
この見た目でその性格は反則だ。その親衛隊に俺も入れて欲しい。俺も二人と一緒に明日花ちゃんの幸せを見守っていきたい。
「ねぇねぇ、明日花ちゃん。明日花ちゃんと一緒にいる時の壱嵩ってどんな感じ?」
「え?」
「あー、それ私も気になる! っていうよりも、壱嵩さんがどんな人が興味ありますね! 明日花ちゃんがスゴくベタ褒めするから、気になって気になって」
突然、話題を振られた壱嵩は軽く眉を顰めていたが、壱嵩よりも先に明日花ちゃんが口を開いて
「壱嵩さんは私にとって人生を変えてくれた人です。彼のおかげで毎日が楽しくなったので。壱嵩さんのいない日なんて考えられないです」
一ミリも遠慮のない惚気に、茶化すような口笛を吹き鳴らした。スゴいな、この子。普通じゃ恥ずかしくてこんなに言い切れないぞ?
「けどさ、コイツって細かくて面倒臭くない? 先輩の俺にも遠慮なしに説教してくることもあるんだけど」
思わず意地悪がしたくなり、心無いことを尋ねてみた。だが、彼女はキョトンとしたまま首を傾げて答えてきた。
「壱嵩さんの場合、私のことを思ってアドバイスをして下さっているので。むしろ感謝したいくらいです。普通の人じゃ、こんな親身になってくれないから」
その言葉を聞いた瞬間、壱嵩の目色に光が戻ったのを見逃さなかった。
そうか、この二人の場合お互いに必要とし合っているんだと理解した。不器用で、なかなか報われなかった後輩が幸せになった姿を見て、俺まで嬉しくなった。
あー、こんなに自分を求めてくれる人間がいるなんて、なんて幸せ者なんだろう。羨ましいったらありゃしない。
今日は俺と葉月さんの為の飲み会だったはずなんだけれど、もういいや。
「なぁ、せっかくだから二人の話を聞かせてくれよ。俺も彼女を作る時の参考にしたいし」
「私も興味あるかも。ねぇ、色々聞かせてくださいね♡」
その瞬間、ギクっと顔を引き攣らせた壱嵩に、俺達は気付いていなかった。
そう、俺も葉月さんも、まだ明日花ちゃんの特性についてきちんと理解していなかったのだ。
———……★
「え、色々話していいの? 本当に本当に?」
「い、いや! 明日花さん、言って良い話と悪い話があるから気をつけて!」
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