閑話 リゼとシャロンの宣戦布告


《眷属》達の沈黙を確認しつつ森林の只中を進む。


 そうした道程の末に簡易拠点へ辿り着いた頃、時刻は夕暮れ時となっていた。


「今日はここで一泊して、翌日、エリザ達のもとに帰還しよう」


 オズワルドの言葉に異論を唱える者は居なかった。


 

 ――それからしばらくして。


 夜半。

 リゼはシャロンと共に、久方ぶりの湯浴みを楽しんでいた。


「ふぁ~。まさに極楽っスねぇ~♪」


 湯を張った大浴槽に全身を浸からせ、気持ちよさそうに息を唸らせる。

 そんなリゼの姿にシャロンは「くすり」と微笑んで、


「背中、流してあげよっか?」

「ん。よろしく」


 浴槽から出てシャワーが取り付けられた壁面の方へ歩く。


「じゃあ、洗うよ。腕挙げて」

「ん~」


 石鹸から出た泡を手に取って、シャロンはリゼの体を洗い始めた。


 滑らかな小麦色の肌が白い泡に包まれていく。


「力加減、どう?」

「ちょ~どいい感じっスよ~」


 泡を塗り込むように、垢をこそぎ落とすように、リゼの肢体を摩るシャロン。

 ひとしきり洗い終えた後、シャワーヘッドから湯を出して、泡を流す。


「ふぅ~。スッキリした~。……んじゃ、交代っスね」

「うん。お願い」


 立ち位置を交換し、今度はリゼがシャロンの体を洗い始める。


「う~ん、あいっかわらず、スベッスベのモッチモチっスねぇ~♪」

「さ、触り方がいやらしいよ、リゼ」


 シャロンのスレンダーな肢体を撫で回すリゼ。

 そうしつつ彼女はイタズラっぽく微笑んで、


「こっちも相変わらずっスねぇ~」

「ひゃっ!?」


 ふにふにと乳房を揉まれ、小さな悲鳴を上げるシャロン。

 それから彼女は肩越しにリゼを睨みながら一言。


「こ、これから成長するもんっ!」

「いやぁ~、それはどうかなぁ~? シャロンの体って、栄養がおっぱいじゃなくてお尻の方に行くっぽいし」


 くだらないことを言い合いながら、笑う。

 そうしていると、不意に。


「……夢みたい、だな」


 ボソリと呟くシャロン。

 その心情を察したリゼは、濡れた彼女の体を後ろから抱き締めて、


「ごめん。心配、かけたっスね」

「……ううん。いいの。こうして、帰ってきてくれた、から」


 シャロンの頬に一滴の雫が流れる。

 それはやがて湯水と混ざり合い、溶け消えた。


「……全部、オズワルド様のおかげ、だね」


 大賢者。

 自分達を救いうる、偉大な存在。

 その名を耳にした瞬間、リゼの脳裏に過去の記憶がフラッシュ・バックした。


《眷属》だった頃のそれは酷く曖昧だが、しかし、最後の方は鮮明に覚えている。


 彼がどんなふうに自分を救ってくれたのか。

 それを思い出すと、


「んっ……♥」


 なぜだか、下腹部の奥が「きゅんっ♥」と疼いた。


「リゼ?」


 怪訝な顔をしながら振り向くシャロン。

 そんな彼女を誤魔化すように笑いながら、リゼは口を開く。


「だ、大賢者様に、お礼を言わないといけないっスね!」

「ん。そうだね。どれだけ感謝しても足りないし、それに、リゼはまだ言えてないし」


 シャロンに首肯を返してから、リゼは彼女の体を覆っていた泡を湯で流し、


「んじゃ早速、言いに行きますか!」


 二人並んで大浴場を出る。


 そうしてから着替えを済ませ、簡易拠点の中を歩き続けた。


 目指すはオズワルドの自室。

 大して離れてはいないため、すぐに到着するだろう。


(なんて言おうかな)


 様々な言葉を脳内に浮かばせながら、足を動かすリゼ。


(あ~、なんか、緊張するなぁ)


 ちょっとした胃痛を感じる。

 そんな彼女の耳に、そのとき、か細い声が届いた。


「ふ…………ん…………ぁ…………♥」


 これにリゼは首を傾げ、


「空耳っスかね?」

「……ううん。私にも、聞こえる」


 そう答えたシャロンの頬は、なぜだか紅く染まっていた。


「シャロン? だいじょうぶっスか? もしかして、のぼせてた?」

「い、いや。ぜんぜん、そんなことはないよ」


 早足で進むシャロン。その反応に疑問を覚えつつも、リゼは隣を行く。

 そうして歩き続けていると、声が次第に鮮明なものへ変わっていき――


 オズワルドの自室、その前に辿り着いたことで。

 リゼは声の正体を知った。


「んっ、くっ……♥ ふぁぁぁぁぁぁぁんっ♥」


 嬌声。


 半開きになったドアから、それが漏れ出ている。


 その主は、


「ソ、ソフィア姉、様……!?」


 目を丸くしながら、リゼはシャロンと共に、ドアの隙間から室内を覗き見た。


 果たしてそこには。


「んんっ♥ ふぅっ♥ くぅんっ♥」


 淫らに喘ぐ、ソフィアの姿があった。


「……っ!?」


 口元を手で覆いながら、リゼは室内の様子をマジマジと目にした。


 ベッドの上で、オズワルドがソフィアの豊かな乳房を揉みしだいている。


 いわゆる背面座位の形。

 小柄なソフィアの体を自らの両足に座らせつつ、後ろから腋下へ手を潜り込ませ……


 ぐみゅっ♥ ぐみゅっ♥ ぐみゅっ♥

 もにゅっ♥ もにゅっ♥ もにゅっ♥


 時には力強く、時には優しげに、ソフィアの爆乳を揉んで揉んで揉みまくる。


「んぁんっ♥ ふっ♥ く、ぅっ♥」


 腰をいやらしく振って、安産型のムッチリとした尻を彼の股に擦り付けるソフィア。


 そんな彼女の痴態を目にしながら、リゼは呟いた。


「こ、これが、強化行為プレイ……!」


 浴場にてシャロンから聞かされていたことではあった。


 大賢者と肉体的に交わることで、自分達は限界を超えて強くなれるのだと。


 そのことを知ったときは、少しばかりの羞恥を覚えただけで、それ以外の何かを思うようなことはなかった。


 けれども今、それを目にしたことによって、リゼは。


「んっ……♥」


 再び、下腹部の奥が「きゅんっ♥」と疼く。


 リゼの視線と意識は室内の二人……いや、オズワルドに、釘付けとなっていた。


「ふっ♥ うっ♥ も、もっと、強くぅっ♥」

「こう、かな……?」


 乳揉みのリズムとテンポが少し乱暴になる。

 そんな変化に合わせて、ソフィアの喘ぎ声が一層大きくなった。


「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ♥」


 もちゅんっ♥ もちゅんっ♥ もちゅんっ♥

 ぐみゅんっ♥ ぐみゅんっ♥ ぐみゅんっ♥


 肉欲を貪るケダモノのような指使いで、捏ね回すように爆乳を揉みしだく。

 そんなオズワルドの様子を目にしながら、リゼはボソリと呟いた。


「アタシも、あんなふうに……♥」


 無意識のうちに漏れ出た声。


 そして。


 きゅんっ♥ きゅんっ♥ きゅんっ♥


 下腹部の奥の疼きが、より強くなる。


「んんっ……♥」


 気付けば、リゼは右手で自らの乳房を揉み捏ね……左手で、欲求を満たし始めた。


 こんなところで、はしたない。

 そう注意すべきシャロンもまた、リゼとまったく同じように動いていて。


「ふっ、くっ……♥」


 二人並んで、自らを慰めながら、オズワルドとソフィアの行為を見守る。


「腕を、挙げてくれないか」

「うん……♥」


 不意に手を止めて、ソフィアに片腕を挙げさせると、


「ふぁっ……♥ そ、そんなところ、汚い、よぉ……♥」


 メスのフェロモンをムンムンに放つ、ソフィアの腋。


 じんわりと汗が浮かび、「むわぁっ♥」と淫臭を漂わせるそこを丹念に舐めしゃぶりながら、右手で彼女の敏感なところを攻め立てていく。


「「「んぁっ♥」」」


 喘いだのはソフィアだけではない。


 ドアの前で状況を隠れ見るリゼとシャロンもまた、同じタイミングで嬌声を漏らした。


 けれども行為に集中しているからか、オズワルドが二人に気付くことはなく、


「……ソフィア」

「ぁんっ♥」


 腋舐めと乳房へのアプローチを中断し、ソフィアをベッドへ押し倒す。


 そうして彼女に覆い被さり、何度か乳を揉んだ後。

 左右の乳房を「ぐみゅっ♥」と中心へ寄せて――


 両方の膨らみを同時に、強く吸い上げた。


「んぁああああああああああああああああああんっ♥」


 ソフィアの刻印が眩い煌めきを放つ。


 それが収まった頃。

 ソフィアとオズワルド、リゼとシャロン、二組の行為が終わりを迎えた。


「んっ、ふぅ……♥」


 室内にてベッドに寝転びながら、満足げに息を唸らせるソフィア。

 ドアの前に座り込むリゼとシャロンもまた、同じ状態となっていた。


「オズワルド、様ぁ……♥」


 息を荒くして、肩を上下させながら、蕩けた声を出すシャロン。

 その隣で、リゼも疲労感と満足感を味わいつつ、部屋の中を覗き見て――


 そのとき、ソフィアと目が合った。


(あっ、やばっ……!)


 ビクッと体を震わせるリゼだったが、しかし、ソフィアは無反応。


 気付いていたのだ。

 最初から。二人の存在を。


 それでもあえて、痴態を見せた。

 見せつけた。


 その事実と彼女の視線が、一つのメッセージを伝えてくる。


“オズの一番は、あたしだから”


 これを受けて、リゼは。


「…………!」


 心の奥底に、火が灯るような感覚を味わった。


 原初にして至高の《戦乙女ヴァルキリー》、ソフィア・ノーデンス。

 彼女への憧れと畏敬の念に変わりはない。


 しかしそれでも。


「惚れちゃった以上、負けられないっスねぇ……!」


 今はまだ端役ですらない。

 どれだけ頑張っても、一人では太刀打ち出来ないかもしれない。

 だが。


「……シャロン」

「……うん。私も、同じ気持ち」


 一人じゃ敵わない。

 けれど、二人なら。


 互いにそんな想いを胸に抱きながら、頷き合う。


「頑張ろうね、リゼ」

「うん。二人で、一緒に……!」


 そして彼女等は心中にて、宣戦を布告した。


 憧れの存在へ。

 ソフィア・ノーデンスへ。


 自分達の勝負は、まだまだこれからだ、と――

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る