第一二話 かくして始まる、ハーレム・ライフ


 唐突に襲ってきたそれに苦悶を漏らした、そのとき。


『この技術はゲームチェンジャーになりうるものだ』


 誰かが俺の方を見て、笑う。

 その姿は白くモヤが掛かっていて、確認出来ない。


『《神核》……我々の技術と君達のそれを組み合わせることによって生まれた、新たな力。まずは称賛を送ろうか。君の能力は僕の想定を遙かに超えるものだった』


 ぱちぱちと、拍手する誰か。


『けれどね、オズワルド。これだけでは不十分だ。戦争を終わらせるためにはもう一つ、絶対的に必要なものがある』


 俺は問うた。

 それはなんだ、と。


『教えてもいいけど……覚悟が必要だぜ?』


 誰かが笑った。


『守られてばかりの君が。臆病者の君が。命を捨てる覚悟なんて、出来やしないだろ?』


 否定はしない。

 だが、それでも。


『わかった。教えてあげよう。《神核》によって勇者を改造したなら、次は――』



 ――ここで、映像が途切れた。


 瞬き一つを挟んで、目前の光景が元のそれへと戻る。


「んんんんんんっ♥」


 どうやら頭痛の影響で、無意識のうちに乳を強く握り込んでいたらしい。


 もぎゅうううううううううっ♥


 それがエリザにとっては強い刺激となったようで。


「ふぁっ♥」


 刻印が一際強く煌めくと同時に、彼女の獣耳と尻尾が「びくんっ♥ びくんっ♥」と痙攣し……それから力尽きたように、後方へと倒れ込んだ。


 そしてエリザはベッドの上へと転がりながら、


「はぁ……♥ はぁ……♥ はぁ……♥」


 甘やかな息遣いに合わせて、豊満な乳房が「たぷんっ♥ たぷんっ♥」と揺れ動く。


 そうした様子と、汗の滴る褐色肌の組み合わせは、あまりにもドスケベで。


「…………っ!」


 オスの本能がもたらす強い衝動に、心が支配されそうになる。

 だが、そんなとき。


「どうなの? 実験の結果は?」


 ソフィアの声を耳にしたことで、ハッとなった。

 俺は何度か深呼吸をして気を落ち着かせると、彼女へ目をやって一言。


「記憶の一部が、戻ってきた」


 結論自体はソフィアにとって喜ばしいものだったのだろう。

 彼女は一瞬、あどけない美貌を明るくさせたのだが……不都合な事実に思い至ったからか、すぐさま不機嫌そうな顔となる。


「これで証明されちゃったってわけね……! あ、あああ、あんたがっ! お、おおお、女の子の体を、好き放題してっ! 激しく興奮する、ヘンタイだってことがっ!」


 いや、男だったら皆そうだろう。


 しかも相手はエリザだ。

 あんなドエロい褐色おっぱいを好き放題に揉んだなら、誰だってケダモノへ堕ちるに違いない。


 そのうえ彼女はこちらに好意を抱いてくれてもいる。

 それを思えば興奮度合いは何倍にも高まるというものだ。


「ま、まぁ、とにかく。今は記憶を取り戻す方法がわかって良かったと、そう思うべきじゃない、かな?」

「ふんっ! それはそうね! なんだか腹立たしいけれど!」


 腕組みをして鼻を鳴らすソフィア。

 それから彼女はエリザへと目をやった。


「……オズのことは一旦、置いておくとして。どうにも、気になるわね」


 おそらくは刻印の発光と、エリザの異様な疲労度を指した言葉であろう。


「あたし達のこれ、今まで光ったことなんて一度もなかったのよね。いったいどういう意味があるのかしら」

「そこは今後の研究課題、だな」


 言い合っていると、エリザがようやく会話可能なレベルまで疲労を回復させたらしい。


「ふぅ……事前に申し上げておきますが、乳を揉まれただけで疲労するといった欠点など、《戦乙女ヴァルキリー》にはありませぬ。またこのエリザ、連続で一〇〇の絶頂を経験したこともありますが、そのときでさえこんな疲労感に襲われた覚えはない」


 最後の方はとてつもないツッコミどころであったが、俺達はあえて黙殺した。


「謎の発光と、強い疲労感。気になるところではあるが」

「うん。いま大事なのは、あんたの記憶を戻す方法がわかったって事実と」

「そこから導き出される、今後の方針、だな」


 答えを出すのは簡単だが、こちらの口から発するのはどうにも憚られる。

 そんな俺の心理を汲み取ってくれたのか、エリザが代わりに結論を述べた。


「オズ殿には今後、拠点内に存在する《戦乙女ヴァルキリー》達に対し、積極的にコミュニケーションを図っていただきたい。主に性的な意味で」


 まぁ、そういうことになる、よなぁ。


「極端に強い疲労感が伴う以上……ソフィアよ、お前一人とのコミュニケーションで済ませるというわけにはいかん」

「……わかってるわよ。それは合理的じゃないってことぐらい」


 むすぅっと頬を膨らませるソフィアに、エリザはどこか勝ち誇ったような微笑を浮かべ、


「案ずるな。お前からオズ殿を奪うわけじゃない。ただ、独占はさせないというだけのことだ」


 言うや否や、こちらの腕に自らの乳房を押し付けてくるエリザ。


 尻尾を振りながらニマニマと笑う彼女にソフィアは「ぐぬぬぬ」と呻いてから、こちらをビシッと指差し、一言。


「さっさと思い出しなさいっ! いいわねっ!」


 不機嫌そうに「ふんっ」とそっぽを向くソフィアに、俺は苦笑を返すしかなかった。


 それから。


「焦っても仕方のないことやもしれませぬが、しかし」


 エリザが再び、念を押すかのように、これからのことを口にした。


「オズ殿。貴殿の記憶は我々からすれば、まさに勝利の鍵そのもの。ゆえにそれを取り戻すためであれば、いかなる手段も受け入れまする。少なくともこの拠点内に籍を置く者達は例外なく、その覚悟でおりますので……どうかご遠慮など、なさらぬよう」


 そして彼女は言った。

 ひどく真面目な顔のまま、あまりにも不健全な内容を。


「お気に召した相手が居たなら、何をしてもかまいませぬ。乳や尻を揉みしだくもよし、接吻を交わすもよし、腋を舐めしゃぶるもよし。思うがままに楽しんでくだされ」


 欲望の限りを尽くしてもよい。

 どのような行為も正義となる。


 そんな言葉に俺は、恥ずかしながら、自身の獣性を昂ぶらせずにはいられなかった。



 ――かくして。


 ドスケベな美女・美少女達と、一つ屋根の下。

 肉欲に塗れたエロエロ・ライフが今、開幕のときを迎えたのだった――


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