第7話 恵里花が聞きそこねた、神官による聖女候補についてのお話し2



 淡々と説明するワルターは、一度聖女候補達を見て、少し首を傾げた。


 〔おや? 7召還されたはずなのに

 何時の間にか、6人になっていますね

 後で、確認しなければ…………


 よもや、試練の森に行く前に

 手をつけるような馬鹿者が………


 あっ……もしかして…第1皇子…

 帰還(かえ)っていたのか?

 嗚呼…確認しなければ…………


 でも、相手が第1皇子だったら………


 いや、落ち着け、私

 今は、この6人の聖女候補に

 説明をするのが先だ〕


 内心で困ったワルターは、無自覚にふんわりと微笑(わら)ってみせながら言う。


 「聖女の資格を手に出来ない方は

 滅多にいませんので………


 真面目に修行すれば………

 大丈夫なはずですよ」


 4人目の聖女候補・田中蘭(たなか らん)は、ワルターの説明にちょっと希望を持った。

 彼女は、長い髪を銀○の美少女のように2つのおだんごにしていた。

 が、見た目はかなり、アレなのだが、性格は全然違うので、ぼそっと言う。

 

 「その修行って?」


 ワルターは、その質問に対して、魔法知識が無いのを前提に、簡素に判り易く説明する。


 「まずは、精霊魔法とも呼ばれる

 火と水と風と土の内で


 適正のある属性の魔法を

 中級まで取得していただきます」


 その説明を聞いた瞬間、5番目の聖女候補・南条鈴蘭(なんじょう すずらん)は、内心で呟いた。


 〔どこの無理ゲーよ〕


 そう思いながらも、ゆるふわウェーブの髪を指先に絡めながら、震える声で言う。


 「魔法なんてモノ

 私達の世界に無かったんですけど……」


 その言葉に乗って、6番目の聖女候補・畑中桔梗(はたなか ききょう)が、アップにしたかなりのロングヘアーの一部の後れ毛を大きく揺らして、思っていたコトをはっきりと言う。


 「習ったコトも無い魔法を取得しろって

 何の無理ゲーなの」


 彼女の言葉に、同感と言う風に6人全員が頷く。


 「だいたい、魔法を使う為の《魔力》が

 あるかどうかもわからないのに…無理よ」


 口々にそう言う聖女候補の美少女達に、説明をしていたワルター神官が、確信を持った口調で言う。


 「それは、大丈夫ですよ」


 「「「「「「えっ?」」」」」」


 びっくりして自分を見る聖女候補達に、ワルターは苦笑する。


 「聖女候補の《召還》時には《魔力》を持ち

 《浄化》の《力》を持つ少女という設定を

 魔法陣に書き込んでおりますから……」


 だから《召還》された者は、選ばれた者なんですと言外に含ませる。

 それを聞いた聖女候補は、安心して思い思いに発言する。


 「じゃあ…私達は《魔力》を持っているのね

 なんだぁ~…良かったぁ~………」


 「でも、魔法の修行なんてしたコト無いのよ

 それって…覚えられるかしら………」


 「そうよねぇ~…ゲームだとさぁ~………


 《魔力》が有るかどうかを子供の頃に調べられて

 魔法の基礎や応用を教える魔法学園に入学して

 魔法使いとか魔術師の修行をするって設定よね


 私達だと、遅すぎるんじゃないの?」


 年齢的に…と、内心で6人共に溜め息を吐いていた。


 「うんうん…修行の時間が滅茶苦茶掛かるとか?」


 「えっーそれだと間に合わないとか?」


 再び、口々に言う聖女候補の6人に、ワルター神官はアルカイックスマイルを浮かべて言う。

 一応、説明をしているワルター神官は、それでもお愛想をしているつもりなのだ。


 「修行の時間は

 半年から1年ほどで終わります」


 魔法を習得する期間が、思っていたよりもかなり短かかったので、聖女候補達は驚きの声を上げる。

 

 「「「「「「えっ…ほんとぉ~?」」」」」」


 もっとも、その声音は、嬉しさが溢れていた。







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