第71話 リベンジ

「どうした2人とも?眠れないかい?」


「うん。ワクワクして眠れない。」


「私は今から緊張しちゃってる…」


 明日、2人だけで狩りをする。2人にその話をした時は喜んだり簡単に即断する事はなかった。それでもいつか必ず通る道であり、僕が2人だけで出来ると判断したのであれば出来るという自信の元最終的に2人だけで狩りをする判断をした。


 よく狩りに同行しているといっても狩りをするのは初めてなのだ。興奮して眠れないのも無理ないか。


「おいで2人とも。」


 2人を両脇に寝かせ頭を撫でてやる。しれっとテンも僕のお腹の上で頭をお腹に擦り付けてくる。しょうがないので2人の合間を縫ってテンも撫でやる。


 しばらくすると安心したかのように穏やかな寝息が両隣から聞こえてきた。大丈夫だぞ、2人のことは何がなんでも僕が守るから。


 ☆


「「おはようウカノ!」」


「ああおはよう2人とも。早起きだね。」


「いつもより早く目が覚めちゃった。」


「そうか。今から興奮しすぎて疲れないようにね。」


「「うん。」」


 いつも通りご飯を済ませ、少しの食後休憩を挟む。その間も2人はソワソワとどこか落ち着きがない様子だった。


 だが2人のそんな時間もそろそろ終わりだ。


「2人ともそろそろ行こうか。」


「「うん…」」


 どこかいつもと違う様子の2人。ただあえてそれに気づかないフリをしながら、僕はいつも通りの態度でいつも通りの狩りに行くように振る舞う。そしてそのまま霧の領域外へと転移する。


 「ここからは2人に任せるよ。2人の思うように行動してくれ。」


「「分かった。」」


 獲物と戦うだけが狩りではなく、獲物を見つける過程もまた狩りなのだ。こちらが相手より先に気づければかなり優位に、相手に先に気づかれれば逆に不利となる。だからこそ獲物を探すという行為は狩りにおいて重要なためここから2人に任せる。


 いつもより遅い速度で進む2人。2人の間に会話は無いがそれでも注意すべき所をそれぞれ別の所を担当出来ているのはただ2人が双子だからという理由だけではないだろう。いつも狩りに同行する上で、ただ付いてくるだけでなく何に注意するべきか、どこを見るべきかを学んでいたのだろう。


 さらに時間をかけて進んでいくと僕の感知範囲に生き物の気配が入った。これは…なるほどおもしろい。2人にとってこれ以上いい相手はいないだろう。


 僕がその存在に気づいてから数分。2人もその気配を感じ、そしてその正体を視認する。


「「ンッ…」」


 少し離れた僕の元まで2人が息を呑む音が聞こえた気がした。目の前にいるのは狼型の魔物。2人を初めて狩りに同行させた時に狩った獲物であり、2人に狩りの、命のやり取りの恐ろしさをその胸に刻み込んだ魔物だ。


 アイツを乗り越えていくんだ。ゾンとルアにはそれが出来るはずだ。

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