第19話 新たな生命
「キュキュキュ キュキュ」
朝目を覚ますと外が騒がしい事に気づいた。テンも何事かと鳴いている。
ここ最近で拠点付近の探索も終わり、このあたりはもはや僕たちの領域と言っても過言ではなくなっていた。
それなのにこの外の気配はなんだと外に出る。気配がする方向に視線を向けるとそこは大蜘蛛が住み着いている樹の上だった。思わず頬が緩む。
「ようやく産まれたか」
「キュキュイ!」
「シャア」
樹の上から降りてきた大蜘蛛のお腹の周りには30センチメートルほどの子蜘蛛がたくさん張りついていた。
「おめでとう。これでお前も立派な母親だな。」
「シャシャシャ」
「子供のためにも食料をとってこないとな。」
「キュイ!」
今日は牛もどきと羊もどきの合計2頭をいまだに運搬用の魔法は完成していないので、運ぶのがかなり大変だったが何とか持ってきた。
運び終えて肉を焼いて食べれるように準備していると大蜘蛛とそのお腹に張りついた子蜘蛛達が樹の上から降りてきた。
そういえば隣に住みついて肉を何度もお裾分けしてきたが一緒に食べるのはこれが初めてだ。肉を焼き終えるまで律儀に待つ姿は何だか可愛く見える。
子蜘蛛達は産まれたばかりで食欲があるのか今か今かととソワソワしているのが伝わってくる。
「よし、これくらいだら食べれるだろう。いっぱい食べてくれな。」
「キュキュイ!」
「シャ!」
子蜘蛛が肉に群がる様は大蜘蛛と出会う前に見たら卒倒してしまう光景だったろうが、今は可愛いものだ。
テンと一緒に暮らし始め、大蜘蛛が隣に住みつき、そして今日一気に命が増え賑やかになった。
なんだかこういうのもいいな。そう思えるのは余裕が出来ているからだろうか。それとも心のどこかでこういうものを望んでいたのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます