第7話 花を贈るのは
俺は、シロネコさんの探すその人、ウミネコを探しまくった。
シロネコさんが喜んでくれるなら、
俺は何でもしようと決めた。
決めたけれど、胸が痛くて痛くて、
道化の顔を演じるには、
胸が痛くて仕方なかった。
俺はしばらくストリートから離れて、
あっちこっちしらみつぶしに情報を求めた。
身体が曲芸を求めていた。
けれど、心はシロネコさんの笑顔を求めていた。
心と身体がばらばらになるって、
わりとこういうことかもしれない。
数日後。
シロネコさんの探していた、ウミネコの情報が手にはいった。
俺は、貯金を崩して、学校休んで、その町へいって、
ウミネコに会うことができた。
ウミネコは、穏やかな感じの男で、
尋ねてきた俺を見て、
「不思議な縁だね」
と、一言。
それから、
「はりついた笑顔はやめたほうがいい。苦しくなるよ」
俺の笑顔は、見抜かれていた。
俺は、シロネコさんに、何かしてあげて欲しいと。
シロネコさんは今でもあなたが忘れられないと。
ここからは、シロネコさんの町は遠いから、
会うのは難しいかもしれないけれど、
何かして欲しい。
と、包み隠さずに話した。
ウミネコはうなずいて聞いていて、
「私がすることは、多分ないよ」
「そんな!」
俺がしたことが無駄になるのは別にかまわないけれど、
シロネコさんが悲しむじゃないか。
「シロネコさんは、今でも、あなたのことが」
俺は叫ぶ。
その人は、静かに語った。
「私とは、会えなかったことにしなさい。死んだことにしてもかまわない」
「でも!」
「シロネコの、思い出の私に勝ちなさい」
ウミネコはじっと俺を見る。
俺は、ウミネコに挑戦することにした。
俺は町に帰ってきて、
シロネコさんには、ウミネコに会えなかったと伝えた。
シロネコさんは、それを聞いて残念そうだったけれど、
「探してくれてありがとう、トビウオ」
と、少しさびしげな笑顔を浮かべた。
俺は、軽い手品で造花を一輪。
「俺は、あなたの思い出に挑戦しますよ」
シロネコさんはきょとんと。
小さな造花は挑戦状。
無理やりシロネコさんに持たせて、俺は決意する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます