短編こわーい話

みなと劉

第1話 潜む者

【潜む者】


東海地方に伝わる怖い話。ある晩、小さな漁村では漁師たちが海での収穫を喜びながら帰宅していた。しかし、その夜、漁師の一人が海から不気味な声を聞いたと言い出した。


彼は「海底に住む者が私たちの船を見ている」と言い、不安を広めた。村人たちは彼を笑い飛ばし、ただの船の音だろうと思っていたが、その後、漁師は行方不明になった。


以来、その海域では夜な夜な潜む者の声が聞こえ、漁に出かける者たちは恐れて避けるようになった。村に伝わる言い伝えでは、潜む者は船に乗っている者たちを誘い込んでしまうと言われており、村人たちは夜の海を避けるようになったという。


ある晩、別の漁師が船で出漁することを決意しました。彼は他の者たちの警告を聞き入れず、船を出した。海の上では静けさが支配し、ただ船の揺れる音が耳に響いていました。


しかし、徐々に夜が更け、漁師は遠くから異様な声が聞こえるのに気づきました。それは何者かが呼ぶような、誘うような声でした。漁師は船を止めて、耳を澄ませました。


すると、海から浮かび上がるような影が見え、その影に向かって声が響いていました。漁師は何か不気味な存在が近づいていることを感じ、怖気づきましたが、なぜか動けないでいました。


影がますます近づくと、漁師はそれがかつて行方不明になった仲間の姿に似ていることに気づきました。その仲間は微笑みながら彼に手招きしていました。漁師は恐怖に震えながらも、船を引き返すことなく影に導かれるように進みました。


それ以来、その漁師もまた行方不明になり、村の人々は夜の海を更に恐れるようになりました。東海地方の漁村では今でも、潜む者の呼び声に耳を傾けずにはいられないのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る