第五話

 十字軍が編成される前の西欧に、ある村があった。

 その村では敬虔なキリスト教信者が多かったために中絶が禁止され、土地も貧しかったために農作物も満足にとれなかった。他の産業も目立つようなものはなく、村人は常に腹をすかしていた。

 そんなとき村に司祭がやってきた。窮状を訴える人々に司祭はこう言った。

 体の弱い子供を満月の晩、教会に集めなさい。さすればあなたたちが飢えに苦しむことはなくなるでしょう。

 その晩が来た。司祭は葡萄酒を飲ませた後、子供全員を殺した。そして朝、教会前にたたずむ村人にこう告げた。

 私が子供たちに聖書に手を当てて宣誓をさせたところ、彼らはその邪悪な正体を現し狼になりました。よってこれは狼の肉です。これを食べて生き抜きなさい。

 村人は泣いて司祭に感謝したという。

 

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