第22話 筋肉肉弾戦

結局少ししか分からないままこの人と戦う事になった。しかも榊原が追加で「能力は禁止ね。」なんていうもんだから参った。ある程度は近接もやってるが能力主体の戦いをしてきたからあまり慣れない。しかも相手は見るからに近接物理が得意。つまり相手の土俵で戦わなくちゃいけない。

「準備はよろしいかな?」

「ああ。」

まずは間合いを詰めて軽く四、五発腕を振るう。だが筋肉にはかすりもしない。しかもコイツ一歩も動いてない。続けてまた手足を使って殴りかかるが今度は全て綺麗に受け流された。

「なるほど。カポエイラだな?殴りに比べて足技の完成度が高い。」

マジかよ。確かにカポエイラを取り入れているけどたった数手で見極めんのかよ。

「カポエイラとしては中の上程の腕前だな。しかし何故カポエイラを取り入れた?主はせっかく能力が有るのだからそれに噛み合う理由があるのか?」

「ああ。能力で体にビート刻めるもんで、もともとダンスだったカポエイラにしたんだ。うまくいけばこっちのテンポだけで戦えるからな。」

「なるほど。理由があればよし。能力抜きの戦いは大まかだが理解した。次はその能力と武術の戦闘を見せてくれ。それ以外の能力は使わぬように。」

やることは簡単だ。振動を体の中で起こして拍と供に打ち込めば威力が上がるし、テンションも上がるし肉弾戦なら使い得だ。

『アップテンポビート』

俺からでたビートが音を鳴らして壁を揺らす。

「ふむふむ、確かに格段に動きの無駄が省けておるな。ではこのリズムを崩されたらどうする?」

さっきまで受け流すか避けるだけだった筋肉がわざと一瞬腕を掴んでくる。だが俺は産まれてからずっと能力の使い方を考えていた。よってこのくらいなら対策済みだ。捕まれた時はその腕を起点に体を翻し相手の体制を崩すと同時に蹴りを入れる。

「惜しかったな。相手が我では無かったら蹴りを一発撃ち込めた。よし、お前の近接に於いての短所を見つけた。まず、攻撃のタイミングが予想し易い。次に単純に筋力が足りておらん。だが体感や能力の使い方はよい。よって筋力向上とフェイントを学べ。しかし案ずるな。最大の長所である能力を封じた状態だったことは承知。榊原殿から聞いたぞ。振動と元素は我は反発出来るが制限は無理だ。」

はぁ、結局歯が立たなかった。筋トレとフェイントか。コイツの場合筋トレは四六時中進めてそうだけどな。

「良かったよリノ君。さて、次は響君だね。」

「それなんですが榊原さん、北沢は逃げました。いつの間にかいなくなってる。」

「せっかく連れて来たのに~。まあいっか。夜ご飯の時間になったら帰ってくるでしょ。権田君、ありがとうね。またトーナメントで会おう。」

「承知。絶対にトーナメントまで生き残って見せましょう。」

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