第46話 シャーロン様の思惑

「ジャンヌ、早速入ろう。今日は僕たちの為に、貸し切りにしてもらっているのだよ」


ファビレスに案内され、早速小さなお家に入った。


「ファビレス殿とジャンヌ嬢ですね。ようこそいらっしゃいました。奥の部屋に、宝石を沢山準備してありますから、ゆっくりご覧ください」


「ありがとう、それじゃあ行こうか?」


ガタイの良い男性が迎えてくれた。どうやら奥に宝石があるそうだ。ファビレスと一緒に、奥の部屋へとやって来た。


確かにそこには、美しい宝石たちが沢山机の上に並べられていた。さらに、加工済みのアクセサリーたちも。


「どうですか?家で取り扱っている宝石は、一級品ばかりです。この宝石なんて、素敵でしょう?」


ファビレスと一緒に並んで座ると、早速男性が宝石を進めて来た。確かにどれも美しい。


「本当に素敵な宝石ですわね。ファビレス、相手の令嬢はどんな方なの?」


「彼女は…美しい金色の髪に青い瞳をした女性だよ。とても綺麗なんだ」



「まあ、相手の女性はファビレスと同じ瞳の色なのね?素敵だわ。それじゃあ、2人の瞳の色を意識して、ブルーダイヤやサファイアなんて、どうかしら?」


「こちらがブルーダイヤとサファイアです。どうですか?輝きが美しいでしょう」


すかさず男性が、宝石を進めて来た。確かに美しい。あら?あそこにエメラルドがあるわ。グラディオンの瞳の色みたい。ファビレスの買い物が終わったら、あのエメラルドを加工してもらって、グラディオン様にタイピンを作ってもらおうかしら?


て、今はファビレスのを選ばないと。


ただ…頭が本格的にぼっとしてきた。体を動かすのも辛い。無意識にファビレスにもたれかかる体制になってしまった。


「ジャンヌ、大丈夫かい?体調が悪いのかい?」


「ええ、ちょっと頭がボーっとするの。体も動かなくて…」


「やっと薬が効いてきた様だな。ジャンヌ、久しぶりだな」


「あなた達は…昔騎士団で一緒だった…」


「そうだ、俺たちはかつて騎士団でジャンヌと一緒に訓練を受けていた。そして俺たちが、あの事件でジャンヌを陥れたんだよ」


「そんな事も、あったわね…久しぶり、皆、元気?」


「何が元気?だ。お前のせいであの後、俺たちは居づらくなり、騎士団を辞める羽目になったんだ。ファビレスだって、どんなに居心地が悪かったか…俺たちはジャンヌのせいで、居場所がなくなった。だから俺たちは今日、ジャンヌに復讐をするためにここにおびき寄せたんだよ。あの時協力してもらった、裏組織の人間にも来てもらっている」


「そんな…どうしてそんな事を?お願い…やめて…」


「悪いがやめるつもりはない。ジャンヌ、お前にはこれから、地獄を見てもらう事にするよ。それじゃあ、お願いします」


「気の強そうな女だが、いい女だな。こんないい女、俺たちの好きにしていいのか?」


いやらしい笑いを向けながら、男たちが近づいてくる。


「いや…お願い…やめて」


男が私に触れようとした時だった。


「ジャンヌから離れろ!」


この声は…


「シャーロン様…」


「よかった、間に合って。ジャンヌとファビレスが、こんな小さな家に入っていくのが見えて、気になって僕もひっそりと侵入してきたんだ。大丈夫かい?ジャンヌ」


私の元に駆けつけると、私を背にかばい相手を睨みつけているシャーロン様。


「なんだ、兄ちゃん。やるのか?」


「僕がジャンヌを守る」


「そんなひ弱そうな体で、俺たちが倒せると思っているのか?」


男たちがシャーロン様に襲い掛かっていく。そんな男たちを、次々と倒してくシャーロン様。


そして


「ぎゃぁぁ、なんて強さだ。もう降参だ。許してくれ」


そう言って逃げていく男たち。


「ジャンヌ、もう大丈夫だよ。さあ、一緒に帰ろう。やっぱりジャンヌのピンチの時には、僕じゃないと。ジャンヌ、これで分かっただろう?グラディオンはいざという時に、ジャンヌを守れない。君を本当に守れるのは、僕なんだよ」


「…」


「ジャンヌ、どうしたのだい?グラディオンが助けに来なくて、ショックを受けているのかい?あいつはその程度の男なんだ。来週のグラディオンとジャンヌの婚約は、白紙に戻してもらおう。そして新たに僕と婚約を結ぶことにしよう。大丈夫だよ、騎士団長には僕から話をするよ。もちろん、グラディオンにもね。グラディオンも1度ならず2度までも、ジャンヌを僕に助けられたと聞いたら、さすがに身を引くだろう」


「…グラディオンを、バカにしないでください…」


「えっ?今何か言った?」


「だから…グラディオンを馬鹿にしないで下さい!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る