第25話 同じ土俵でやらせてやる
参加アカデミーは四校。
今回の開催校であるエーギルアカデミー。
セイバーズの養成学校を最初に開校した、と謳われるアウズンブラアカデミー。
女性のセイバーズを増やそうと、女子の教育に力を入れているヴァルキリーアカデミー。
魔法使いこそ至高、ってバカな考えを持っているミーミルアカデミー。
当日会ったヴァルキリーアカデミー生の代表は女子で、双子だった。
スノウ様を見て、
「「かわいい~」」
と、同じ声で叫んでいた。
「うむ!」
と、ご満悦なスノウ様。ない胸を張っている。
ちなみに彼女たち、スノウ様以外には絶対に話しかけなかった。別にいいけど、交流しなくていいのか……?
まぁ、昨日のミーミル式交流は、もう勘弁だけどな……。
さらに、集まった代表を見て俺は驚いた。
エーギルアカデミーの代表に、ユーノたちが選ばれていたのだ。
ジェイド学長に、「どういうことなんですか?」と、詰問してしまった。
ユーノたちだってオリエンテーションを終えたばかりだ。三年生が倒すような魔物と戦うにはリスクが大きすぎる。
「今回、三年生はパスしてきたんだよ。どうやったって君たちの引き立て役になるからね。セイバーズへの入会試験を控えているのにさすがにそれはないだろう、と、言われると頷かざるを得ない。二年生以下で代表を選んだら、彼らが一番だった。……君だって、ユーノ・モーガン君の実力はわかっているんだろう? 君に隠れているが、彼だって強いよ。ただ……向上心がないのが玉に瑕だね。彼はセイバーズになりたいんじゃなく、君がセイバーズを目指しているから彼も同じアカデミーに入った、ってだけだろうから」
……学長の言葉は、ある意味当たっていた。
真面目に目指せば強いのに、アイツは俺にこだわって、それ以外はなおざりだ。
俺に嫌がらせをするため、使い潰すため、このアカデミーに入った。
目的を失ったアイツは、今後どうするんだろう……。
俺が俯くと、ジェイン学長が俺の肩を叩く。
「エドウィン・フォックス君も言っていたが、君とユーノ・モーガン君は、互いに、もう少し自立した方がいい。自分を伸ばすことが出来るのも、自分の将来を決めるのも、君たち自身だ。いつまでも現状のままじゃいられない。ユーノ・モーガン君もそうだが、君もだ。弟にこだわるのをやめ、君自身の道を歩いていきなさい。でないと本当に、エドウィン・フォックス君と別れることになるよ」
「…………はい」
だけど本当は、弟にこだわっているわけではないんだ。俺は、父の息子である自分にこだわっている。
エーギルアカデミーの代表が二組いることに因縁をつけてきたのは案の定、ミーミルアカデミーだ。
「開催校だからって、いくらなんでも好き勝手やり過ぎじゃないですかね? 今までそんな真似をした開催校はありませんよ」
ミーミルアカデミーの学長のセリフに、ジェイン学長は微笑みながら言い返した。
「イヤミー学長。代表は彼らで、この生徒たちは代表戦には出ません。ですが彼らはセイバーズ協会が切望していた『Sランクのアイテムハンター候補生』、来賓の方々がぜひともその実力の一端を見たいと嘆願されたのですよ。スポンサーあってのアカデミーですから、快諾いたしました」
そして、思いついたように提案した。
「――ちょうどいい。彼らはまだオリエンテーションを終えたばかりで到底対抗戦に出る実力はありませんので、アイテムハンター用の対抗戦を用意したんです。そちらの代表も参加してはいかがですか? ……あぁ、対抗戦二つに出る実力は無い、とおっしゃるならそれで結構です。その旨を来賓に伝えましょう。対抗戦に出場したとはいえ、オリエンテーションを終えたばかりの一年生に負ける実力だとね」
うん、煽ったね。
これで、俺をこき使ったミーミルの代表チームは俺たちの土俵で対抗戦を行うことになった。
ついでに、
「面白そうだからやりたい!」
と、スノウ様が言い出し、アウズンブラアカデミーの学長が、
「やめときなさい、絶対に勝てないわよ?」
と言って止めたので、逆に火のついたスノウ様が、
「出る! 出る出る出る! 出るったら出るんだー!」
と、暴れながら言い張った。
ヴァルキリーアカデミーの学長はため息をついて、
「そうなると、うちも出さないわけにはいかないわねぇ……。途中で棄権してもいいなら賑やかしで参加するわ。――貴方たち、面倒だけど適当に戦って、飽きたら棄権してちょうだい。……あ、その代わり、スライムもやりなさいよ! 君たち、S出しなさい!」
とか、最後を俺たちに向けて言ってきた。
そしてそれを聞いたアウズンブラアカデミーの学長(男性)も、
「スライムのSアイテム!? ちょっと、私にも分けなさいよ!」
と目の色を変えた。
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