第16話 やっぱ女かよ!
翌日。ホームルームで、俺とエドウィンがアイテムハンターを目指していること、アイテムハンターはセイバーズの中では特殊な職位かつポイント制では評価しきれなくなったことにより、ランキングから外されることになった、という説明があった。
ざわついたが、ほぼ全員が納得した顔だ。
昨日のナタリア教官の悲鳴や、俺たちの納品の査定でマスターズルームが空になった話、さらには、俺たちが去ってからの教官たちの浮かれようが噂になり、ポイントがすさまじいことになったのを察したのだろう。
全員がチラリと俺を見たが、俺は特に反応しなかった。
俺を憐れんでくれるのなら御の字だし、ざまあみろでもまあまあいい。そう絡まれたとき、相槌を打てばいいからな。
問題は、この措置すら納得しない連中だな。いないことを祈ろう。
昼休み、ランキング表が張り出されたらしい。
もちろん見に行かない。興味ない。絡まれたくない。
俺は、マスターズルームに行ってようと考えて席を立った。
シモンズ教官がさっそく参考書を取り寄せてくれたらしい。
「学長も、わがアカデミーからアイテムハンターが輩出されることを喜び、皆でサポートするようにとの指示が出ている。君たちのおかげで予算も潤沢にあるからな! 他にもほしい参考書があったらぜひ言ってくれたまえ!」
と、ホームルームが終わった途端に声をかけられたわけだ。
予算が潤沢か……。確か、アカデミーは直営の商会があり、そこで生徒が納品したドロップアイテムを販売していたな。
しかも、まだ本職ではないということで格安に売っている、とか聞いた。行ったことすらないけど。
俺が廊下を歩いていると、向かいから誰かやってきた。……確か、俺に殴りかかったエエカッコしいの男だ。
俺が思わず眉根を寄せてしまったら、相手も俺を認めてばつが悪そうな顔で謝ってきた。
「……その、悪かったよ。殴りかかってさ……」
「謝られても許す気はない。女子にカッコつけたいからって理由で、俺を利用した罪は重い」
「そっちかよ!? ……あ、いや、確かにそう言われるとホント悪かったって思った、反省してるって。……だって、イイトコ見せたいじゃん?」
じゃん? じゃねーよ! ふざけんな!
「違うことでイイトコ見せろよ! 俺に食ってかかったって別にカッコいいワケねーだろ! 大ごとになってお気に入りの女子ごと反省文書かされるだけだわ! そんなんなら、ちょっとポイント譲ってやった方がまだ効果的だろ!」
「それはもうやってる。しかも、慣れちゃってて当たり前になってる」
マジかよ。女子って結構エグいな。いや男がバカなだけか。
悪かったもうやらないから、とペコペコ謝ってきたので一度だけ許すことにした。いや、次にやったらマジで女子ごと反省文書かせるように仕向けてやるからな!
謝ってきた男はグレッグ・クワンと名乗った。
なんとなく連れ立って歩く。
「アイテムハンターってどうよ?」
「どうって言われてもなぁ……。わりとプレッシャーかもな。魔物討伐が目的じゃないから、アイテムを必ず拾わなきゃならないのと、レアドロップアイテムが依頼内容だから、ボス部屋なんかは周回確定。効率よくやらないと任務失敗になりそうだ」
「うわぁ……マジかよめんどい」
「そっちはどうよ? 俺、元のバディは弟でちょっと特殊だったし、今はアイテムハンターになったから他所を知らなくてさ。どういう感じで戦ってるんだ?」
聞いたら、互いに見つけた敵をそれぞれ倒すらしい。もしも二人で倒したときは、彼女にドロップアイテムを譲っている、って感じだそうだ。
ふーん……。どこも似たような感じか。俺たちも連携はしてないな。どっちかがメインで戦って、雑魚掃討はそれぞれ頑張る、って感じだもんな。
「魔法は?」
「あんまりだなー。詠唱してる暇があったら剣で斬りつけた方が早い。お前は?」
「同じくかな。エドウィンはわりと使ってるけど」
「え!? あの脳筋、魔法使いなのかよ!?」
「……俺も驚いてる。アイツってわりと天才型。真面目にドロップアイテム拾ってりゃもっと上にいけただろうに……」
言動は確実に脳筋なのにな。
「あー……。それで思い出したけど……ランキングはいいのか? 弾かれてたけど」
グレッグ・クワンが俺の顔色をうかがうような感じで尋ねてきた。
「気にしない。俺はワーストワン、エドウィンはワーストツー。順位を気にしてたらもっと頑張ってたよ。というか、レアドロップアイテムに関しては努力じゃどうにもならないから、そこを評価されてランキングで上がってもなー……って俺たちも思ってたし」
「……なら、いいけど。俺らが騒いだからランキングから外されたかもしんないって、ドナが気にしてたから……」
グレッグ・クワンがモニョモニョ言った。
…………。やっぱ女かよ!
尻に敷かれている疑惑のグレッグ・クワンと別れてマスターズルームに行くと、エドウィンとばったり会った。
「あれ? ランキング見に行ってたんじゃないのか?」
「見に行ったら呼び出された」
俺は目を細めた。
「……俺が目を離している隙に、暴れたりしてないだろうな?」
「してねーよ! 濡れ衣着せんな! つか、誰も話しかけてこなかったぜ。アレだな、『腫れ物に触るな』」
それはよかった。
「じゃあ、なんで呼び出された?」
って俺が尋ねたらフィッシャー教官が出てきた。
「ちょうど良かった、ジミー・モーガン。学長室へ来てくれ」
……学長に呼び出されたのか。
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