本のマモノ編
41色 語りかけてくるモノ
僕の名前は、
夜が深い時間帯。 僕は実家の本屋で出た、売れ残りの本を読んでいた。 まあ、あまりよいことではないが、本屋の息子という特権を活かしたものだね。逆に考えてみたまえ、売れ残っているのを、僕が読んであげているんだ。寧ろ、感謝されることだと思うけどね。
「まあ、少しだけ面白いが、お金を払うかと云われたら、微妙な作品だね」
そう一人で感想を述べながら本を閉じる。
時計を確認すると、針が二時過ぎをさしていた。
「しまったな……夜ふかしをしすぎた」
たまにこういった本は掘り出しモノがあるから、返品確認の際はつい夜ふかしをしてしまう。 だけど、これといったモノはそうそう見つからないけどね。
「これを除いてだけどね」
僕は鞄から一冊の本を取り出す。
この本は辞典の様な図鑑といった方がいいかな、分厚い黒い本だった。 この本は親も発注した覚えのない本だといっていて返品しようとしていたが、僕が引き取ったのだ。 始めは、その本の禍々しさに止められたが、僕はなんとなくその本に呼ばれている気がして、半ば無理やり本を引き取ったのだ。
そして、引き取って正解だった。 本の中身は全くもって読めない字が書かれていたが、読み返していく内に少しずつ『読める』様になっていった。 この本の内容は解読した分も含めると恐らく『闇魔法書』とでもいうべきかな。 変わった魔法が書かれていた。
「時期的にもうそろそろかな」
僕がそう呟くと本が光だした。
「やっぱりね」
口の端を上げながら呟く。
この本は定期的にこの様に光だして、少しずつ本の文字が読める様になるのだ。 その現象の意味ははっきりとは分からないが、推測するに少しずつ『解凍』しているといった方がいいかな。
「今度は何が解凍されたのかな」
僕は少しわくわくしながら本を開く。
「ん? これは?」
本に新たに追加された文字をみて首を傾げる。
「『テイクオーバー』?」
『テイクオーバー』って確か……。
(そのカラダ、ワタシがいただく)
「!?」
その声が聞こえた瞬間、本から黒い何かが僕の体を覆った。 そして、僕の意識はそこで途切れた。
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