8色 アカリの日常
ディリリリリン!! というとても頭に響く音が室内に鳴り響いた。
わたしは手探りでその耳障りな音のする目覚まし時計を止めて、重いマブタを少しずつ開き、上半身をゆっくりと起こし、ベットの上に座り壁にカラダを預け、しばらくそのままの状態でいた。
数十秒ほど経った後、わたしは目だけを時計に移した。
時刻は7時過ぎを指していた。
わたしはベットから足を床に着けて立ち上がり、あくびをしながら手を広げてカラダを伸ばし深呼吸をして、部屋にある机に歩みより、その上に置いてある箱の中を覗く。
「ピュルルーン♪」
わたしに気が付くとクーはゲンキよくわたしの頭の上に乗った。
「おはよう、クー」
頭の上のクーにむけていう。そして、軽く支度を済ませると部屋を出る。
「おはよう、ママ、パパ」
「あら、おはようアカリ、クーくん」
「おっ、今日は寝坊しなかったな」
わたしは部屋を出て、一階のリビングに移動してママとパパに挨拶をすると、丁度パパが仕事に行くところだった。
クーのことは昨日親には説明したよ。
「じゃあ、そろそろ行ってくるよ」
「うん、行ってらっしゃい」
いつも通りの会話をしてパパは仕事にいった。すると、ママがナニかに気付いたのか「あっ!」と声をあげる。
「やだ、パパのお弁当のお箸を入れわすれちゃった。ちょっと届けてくるわ」
ママはパパを追いかけていった。わたしはその間に朝ごはんを食べる。
「ただいまー」
しばらくしてママが帰ってきた。
「大丈夫だった?」
「ええ、ちゃんとパパに届けたわよ」
「よかったね、この前は仕事の資料と間違えてわたしの教科書を持っていっちゃったもんね」
「もう、パパったらドジなんだから」
わたしとママはクスクスと笑いあっていると、ふと、テレビからあるニュースがわたしの耳にはいってきた。
「『とても嬉しいニュースがはいってきました。カーミン出身の格闘家、
「あら、このコ、アカリと同じ学校に通ってたコじゃない?」
わたしがテレビに集中しているとママがいう。
「え?そうなの?」
「ええ、たしかアオイちゃんと同級生のコよ」
アオイとはシーニのことだよ。
「へぇーそーなんだ、知らなかったな」
わたしはニュースの続きを聞く。
「『優勝しただけでも素晴らしいことですが、決勝戦はなんとたったの三十秒で決着がつきました。決勝戦に進むまでにも彼女はすべての試合を十秒以内に終わらせ、別名「秒殺の女王」と恐れられていました』」
「そういえばアカリ」
テレビに夢中だったわたしにママが声をかける。
「なに、ママ?」
「もうそろそろ準備しなくて大丈夫?」
「え?」
ママにそう言われ、わたしはリビングの壁に掛けてある時計をみる。時計の針は七時二十八分を指していた。
「あー!!もうこんな時間だ!」
わたしは食べかけの朝ごはんを流し込み、慌てて学校の支度をした。
「行こうか、クー」
青ブドウを食べ終えたクーはゲンキな鳴き声で鳴きながら、わたしの頭の上に乗った。
「あまり慌てちゃだめよ」
「はーい♪」
ママの言葉にわたしは玄関のドアを開けながら返す。
「じゃあ、行ってきまぁーす」
そして、ゲンキよく家を飛び出した。
学校の門がみえるところでわたしは前を歩く白と水色の服を着た水色の髪の男の子の後ろ姿を見つける。わたしは男の子に駆け足で近付き、後ろから声を掛けた。
「おはよー、シアン」
「……?」
その少年、シアンはわたしの声に気が付き振り返り、タレ眼で透き通るようなキレイな空色の眼でわたしの姿を捕らえるとやるきがなさそうで寝むそうな声で「……おはよ」と返してくれた。
「今日もあいかわらずねむたそうだね」
「……ん」
あくびをするシアンの左側に並び歩く。
「そういえば、シアン」
「なに?」
シアンはあくびをしながらこちらに顔を向ける。
「マシロミライさんってしってる?」
「……?……マシロミライ?」
シアンはこちらに顔を向けると首を傾げる。
「うん、今日テレビに出てたマシロミライっていうスゴイ人がシーニの同級生ってママが言ってたからシアンはしってるかなと思って」
「…………」
「シアン?」
シアンはすこし何かを考えている気がしたけど「……まあ、いっか」と呟いた。
「しってる」
「しってるの?」
「ねえのトモダチ」
「ええ!?」
「今日ねえが「さすが瞬殺のゴリラ」ってほめてた」
「へーゴリラさんなんだね」
「…………」
そう話しているうちにわたしとシアンは学校の門を通り抜けていた。
わたしは下駄箱の玄関前の花壇でお花にお水をあげているクリーム色の髪がいろいろな方向に跳ねている、特徴的な髪形の少年が視界に入った。
「あっ、あれって」
わたしとシアンはその少年に近づき交互に声を掛ける。
「クロロン、おはよー」
「……おはよ」
クロロンと呼ばれた少年は振り返り、わたしとシアンに気が付くとかわいい笑顔をむけながらゲンキに返してくれた。
「みっくんといろのさん、おはよ」
この飛びきりの笑顔がステキな男の子は
わたしは彼のことをクロロンってよんでいるよ。
さっきもいったようにクロロンはクリーム色の髪で髪形がスゴイ全体的にくるくるとしていて超癖っ毛体質なんだ、一言でいうとテンパっていうやつかな?
「あれ? いろのさん、もしかしていろのさんの頭の上に乗っているコトリさんがみっくんのいっていたクーくんかな?」
クロロンはわたしの頭の上で「ピュリュリューン♪」とゲンキに鳴くクーを見上げた。
「うん、そうだよ! あっ、そういえば、クロロン、シアンといっしょにクーの寝どこを作ってくれてありがとう」
わたしはクーの寝どこを作ってくれたことを思い出し、お礼をいう。
「ううん、こちらこそつかってもらえてうれしいよ、寝ごごちはどうだったかな?」
クーはとてもご機嫌に「ピュルーン♪」と鳴き、小さなハネをパタパタとさせ、それをみたクロロンは「なら、よかった」とクーに笑顔を返した。すると、クーはわたしの頭の上からクロロンの頭の上に移動した。
「あっ、クーがクロロンの頭の上に」
「……クウタがクーの上に」
「みっくん多分逆だと思うよ?」
わたしたちは一緒に教室にいった。
「あら、お三方おはようございます。相変わらず仲がよろしいですわね」
「クウタ、なんだい?その頭の珍鳥は、ついにそのチリチリ頭が鳥の住処にでもなったかい?」
教室に入ったわたしたちに、お上品な喋り方で服の裾がひらひらとしている、優雅な格好をしていて、左右の長い髪をカールさせている黄色い髪の女の子と分厚い本を小脇に抱えている、紫色の髪のメガネの男の子が近付いてきた。
「あっ、おはよー、フラウムとレータ」
「おはよう、きのせさんとれいたくん」
「……おはよ、二人とも」
わたしたちは二人に挨拶をする。
「君達、僕をこのひらひらオンナとセットみたいにしないでもらえるかい」
わたしたちの挨拶にメガネの男の子はメガネをクイッとやりながらため息をする。
「ワタクシもこのイヤミメガネとまとめられるのは気分があまりよろしくありませんわね」
黄色い髪の女の子は笑顔でそう返すと、メガネの男の子はぴくりと反応する。
「おっと、見た目は気取った格好をしているけど中身は脳筋の君と珍しく意見が合ったね」
「あら?ワタクシは貴方みたいなイヤミヒョロメガネと意見が合っても一ミリも嬉しくありませんけどね」
メガネの男の子は笑顔で挑発すると黄色い髪の女の子も笑顔で言葉を返す。
「その言葉そっくりそのまま返すとするよ」
お互いの言葉のやり取りに二人は静かに互いをみる。
「………」
「………」
二人は静かに睨み合う。
…えーっと、とりあえず二人の紹介をしようか。お上品な喋り方の少女の方は
そして、メガネの少年の方は
……まあ、観ての通り二人はとても仲が悪いんだ。
「二人ともケンカはダメだよ」
カミナリがバチバチしそうな、ていうかしている二人の間にクロロンが止めに入る。
「ほら、二人とも仲良くしてね。それに、きのせさんはノーキンなんかじゃないよ、キレイで体力もあって、運動がとても得意なのスゴイうらやましいな。ボク全然体力がないから。それに、れいたくんはメガネで頭もよくて勉強が得意で頭のよさそうなメガネをかけているの尊敬するな。ボク勉強が苦手だから」
クロロンは二人を褒めながらなだめた。
「レディーたるもの美貌の為に体を鍛え己を磨くのは当然の務めてすわ」
「メガネのことしか褒められていない気がするが…まあ、君に言われずとも僕が天才なのは当然さ」
二人は落ち着きかなり気分をよくしたみたい。
「ふん!!」
だけど、互いにそっぽを向く。
まあ、二人のケンカをクロロンが止めてその場は収まる、これがいつものわたしたちの挨拶みたいな感じかな。
「ところで、緑風さん、さっきそこのメガネが逝ったように緑風さんの頭に乗っているその謎の鳥はなんですの?」
「おい、さりげなく僕を殺すんじゃない」
フラウムはクロロンの頭の上に乗っているクーをみる。
「えっと、ボクもよくわからないんだけどみっくんの話によると空から降りてきたんだって」
「?」
二人は首を傾げる。
「じゃあ、わたしが説明するね」
わたしは昨日あった出来事を説明した。
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