2色 マルとシーニ
「あっ! いた! おーい、マル! シーニ!」
森を無事に抜けたわたしは急いで公園にむかった。 そして、公園の中で話す二人の女の子をみつけ、大きな声で呼びかける。
「あっ、アカリ~」
「遅かったですね」
気づいた二人の女の子が手を振りながら、近づいてきて、わたしも二人の方に小走りで近づいた。
「おくれてごめん!」
遅れてきてしまったことを謝った。
「ん? ナニを持ってるんですか?」
果物のヘアピンを直しながら、わたしが持っているタマゴをじっと見つめた。
この赤髪で髪を果物のヘアピンで七三に分けているマジメそうなこの子は
隣町の魔導学園に通っていてよくいっしょに遊んでいるトモダチなんだ。
「鳥の巣から取ってきた訳じゃないよね?」
隣にいたもう一人の女性が冗談交じりに聞いてくる。
このすこし長めの髪を後ろで結んでいて、腰に上着を巻いている活発そうな、この子は
彼女はわたしの通っている魔導学園の卒業生で、今は魔法を日常生活で役にたてるための道具をつくる仕事をしていて、空いた時間によく遊んでくれる、おねえさんトモダチなんだ。
「ち、ちがうよ! えーっと、なんていえばいいのかな~」
どこから話していいかわからなくて、とりあえず、簡潔に一言だけいう。
「いつもの森の道で迷っちゃって」
わたしの言葉に二人は目を丸くすると、シーニが笑いだす。
「あははは、いつも通る道で迷うなんてアカリはホントにドジだな~」
「森でに迷ってそのタマゴを拾ったってことですか?」
隣で笑うシーニと違ってマルは冷静に聞いてくる。
「え、えーっと……どこからいえばいいのかな~」
わたしはとぎれとぎれだけど、がんばって森でのフシギな体験について話した。
「そんなことがあったんだ」
「不思議なこともありますね」
さっきまで笑っていたシーニは腕を組んで、マルはあごに手をあてて考えこんだ。
「そのタマゴって
すこし考えこんだ後シーニがそういった。
「私もそう思いました」
マルも続けていう。
「
「そう、アカリだって魔法の素として使う事あるでしょ。 でも、これは少し違うみたい」
「たしかに」
シーニの言葉にマルは相槌を入れると、二人は考え込んでしまった。
「…………」
自分の世界に入ってしまった二人をみながら、わたしも考える(よくわからないから考えるフリ)。
「それと、幾つか気になることがあります」
マルが手をあごにあてながらいう。
「気になること?」
「アカリがみたっていう、その金色のタマゴが落ちてきた時の『ひかり』についてなんですが、私は見なかった……いえ……『見えなかった』んです」
「え!?」
マルの言葉に目を見開いて驚くけど、隣でシーニも頷く。
「たしかに、わたしも見えなかったな」
二人の言葉に不安になる。
「アカリの云っていることが本当だとすると……考えられるのはひとつ」
マルは真剣な顔になり語りはじめた。
ごくり……わたしはつばを飲んだ。
「アカリは一時的にいつもの森とは違う森に迷いこんだんだと思います」
「それってどういうこと?」
シーニが聞き返すとマルはあごにあてていた手を放し、人差し指を顔の前に立て答える。
「もしかしたら、飛ばされたが正しいかもしれません」
マルは真剣な顔のまま続ける。
「アカリは何かのチカラにより一時的にいつもとは違う森に飛ばされて何者かにそのタマゴを託されたのだと私は思います」
「たしかに、それだとアカリが聞いた謎の声も納得がいくね」
マルの仮説にシーニも納得したみたい。 だけど、それを体験したはずのわたしが一番理解できてないよ……。
「しれんのタマゴをあなたにたくす」
あのとき聞こえた言葉をつぶやいてみた。
「その《しれん》というのがなにかはわかりませんが、今はその答えが出るまでタマゴを観察してみましょう」
「うん、そうだね」
二人は納得して首を上下に振っているけど、わたしはすこしおいてけぼりな感じ……
「アカリ」
「え!?」
困惑していたわたしにマルが話しかけてきた。
「な、なに?」
「取り敢えず、そのタマゴを調べさせてもらってもいいですか?」
「うん、わかった」
そういうと、わたしは腕にかかえていたタマゴを慎重にマルの腕に渡そうとし、マルもタマゴを落とさないように慎重に受け取ろうとタマゴに触れた。
次の瞬間
ピキッ
なにかが割れるような音がした。
一瞬の沈黙
ピキキッ
わたしたちはその音がするほうに目を向ける。
そこには、さっきまでつやつやだった金色のタマゴにヒビがはいっていくのがみえた。
また沈黙
ピキピキッ
そして、なんとなく状況が理解できたわたしたちは
「われたァああああああぁあああああ~~~~~!」
同時に叫んだ。
「どどどどどどどどうしよ~~~!?」
わたしはタマゴを渡そうと両腕を伸ばしたままのポーズでガクガク震える。
「ととととととりあえず手を放しますか!? ブン投げますかぁ!?」
マルはタマゴに触れながらタマゴを受け取ろうとすこし曲げていたひざをガクガクさせながらいう。
「ふたりとも! とりあえずおちつこうか!」
シーニがパニックになっているわたしとマルを落ち着かせる。
だけど、タマゴのヒビはどんどん広がっていき、わたしたちは慌てて公園の中を意味なくドタバタと走り回った。
すると、タマゴが手から離れて、目線のすこし上に浮きだし、金色の眩いひかりを放ちながら弾けるように割れた。
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