運命を待つ
「もし、次に会ったら一緒に『大山遊園地』へ行こう!」
「うん! 約束だよお兄ちゃん!」
両親の離婚で離れ離れになった幼い兄と妹。
二人が不器用な約束をしてから長い年月が経っていた。
妹と母親は母の実家へ帰った後、連絡は途絶えた。
兄は父親に遠慮をして、探そうとはしなかった。
兄は成人して父親が亡くなった後、妹を探し始めた。
母の実家は、既に誰も住んではいなかった。
近所の人に聞くと、母が戻ってから直ぐに出て行ったらしい。
「小さい女の子を連れて何処へ行ったのかしら……」
「元気でいると良いけど」
近所の人はそう言っていた。
八方手を尽していたが、母と妹の消息は不明であった。
ある日、兄は新聞で『大山遊園地』が閉園する事を知った。
あの約束をした遊園地である。
閉園当日、兄は『大山遊園地』に来ていた。
兄は、今日妹に会えると思っていた。
二人の不器用な約束は叶う運命だと確信していた。
遊園地の門の前で、兄は運命を待っていた。
しかし、妹らしき人は現れなかった……
閉園の時間になり、兄は諦めて帰ろうとした。
その時、後ろから声をかけられた。
「お、お兄ちゃんですか?」
「わたし、あの時の約束の為に今日遊園地へ来たんだけど」
「誰がお兄ちゃんだか、わからなくって……」
「最後まで待っている人が、お兄ちゃんだと思ったんだ」
「二人が会ってから、遊園地へ行く約束だったから……」
「約束は絶対に叶う運命だと信じていた」
「お兄ちゃん、わたしだよ!」
Fin
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