四つの「待つ」話

わたくし

返事を待つ

 ボクは、この春卒業する鳥海とりうみ先輩に告白をした。


 先輩は『地域研究部』の元部長で、ボクや部員達を市内の各地へ引率をしてくれた。

 三年生になっても新米部長のボクのフォローの為に、部活動に参加をしてくれた。

 いつも前向きで明るい性格の先輩にボクは、「先輩と後輩」以上の感情を持ち始めていた。


 四月から先輩は推薦入学で東京の大学へ進学する。

 その前に、ボクはこの思いを先輩に伝えた!

 先輩は、

「ごめんなさい、少し考えさせて」

 と言って、返事を言わなかった・・・


 告白をした次の日の朝、学校の靴箱に手紙が入っていた。

 先輩からだ!

 

手紙には、

「伝えたい事があります」

「今日の夕方、添付している地図に記す場所へ来て下さい」

「場所に着いたら彼方の名前を言って指示に従って下さい」


 何だろう? 伝えたい事って? 昨日の返事かな?

 添付していた市内地図の真ん中に記しがあった。


 放課後、地図の場所へ行ってみた。

 そこは雰囲気の良い古い喫茶店だった。

 カラン、カランと小気味いい鈴の音を鳴らして、趣のあるドアを開ける。

 カウンターには髭の生えた初老の男性が立っていた。


「いらっしゃいませ!」

「あの~、愛宕あたごです」

「伺っていますよ、その席に座って待っていてください」

 奥のボックスシートを指さす。


「わかりました、あとコーヒーをお願いします」

 席に座ると机の上に封書が置いてあった。

「さっきの地図に、下記の場所を順番に線で繋いでください」

「私の気持ちは、これでわかります」

「1.中学校・・・・・25.大澤屋、1へ戻る」


 先輩が来るまでコーヒーを飲みつつ、地図に線を書き入れる。

 最後の線が繋がった時、目の前に注文していないチョコレートケーキが差し出された。

 ボクは驚いて見上げると、給仕服姿の先輩が立っていた!


「先輩、何してるんですか?」

「フフフ、受験も終わったし、伯父さんのお店でアルバイトをしているの」

「見て、可愛い衣装でしょ」

 と言ってクルリと一回転をする。

 確かに可愛い・・・


「先輩、このチョコケーキは何?」

「頼んでないけど・・・」

「愛宕君、今日は何の日?」

「あっ、バレンタインデーだ!」

「正解! これは私のおごりよ」

「じゃぁ、昨日の返事は?」

「地図を見て、返事が書いてあるから」

 ボクは慌てて地図を見直す。


 地図には大きいハートマークが書いてあった!




 おわり

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