第7話 飛んだ後に・・・

 ドン!という音がコンクリートから発された。


「おーい! 人が落ちてきたぞ!救急車を呼べ!」


 様子を見た人は、悲鳴を上げたり、その場にへたり込んだりさまざまな反応を示している。


「男だ! 飛び降りたんだ、このビルの屋上から」


「見たところまだ若いじゃないか、何があったんだか」


 介抱している人々は若い男の顔を見た。


 体から出血しているが、顔は無事であった。


 人々は男の顔を見る。


「・・・なんか、すごい安らかじゃないか?」


 若い男はすでに亡くなっていた。


 しかしその顔は安らかに微笑んでいるようにも見えた。



 

 老人は下に降りて男の様子を見守った。


 野次馬にまぎれる。


「間違いなく成功だ。安らかな死に顔。間違いない、わしの研究は完成した」


 老人は満足そうに頷いた。


 小瓶を見る。


「これは人に幻覚を見せ、死の苦しみを経験することなく死なすことができる薬だ。

使った本人は死んだことすら気がつかない」


 老人は若い男の体をもう一度見る。


「感謝する。これで死にたいという者たちを楽に死なせてやることができる。いろいろ嘘をついたことは謝るが、もとより死ぬ運命にあった命だ、だがお前の命無駄にはせんぞ」


 老人は足早に現場を立ち去った。

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