第15話・結果発表

家の電話が鳴る。

3コール以内に出るのが正しいと思っている母親が目の前を小走りで通り抜けた。

どうせ勧誘電話だろうに。


「いつもお世話になっておりますぅ」


電話に出る時に声が1オクターブ高くなるのは何故だろう。

奇妙な習慣だ。


「はい、はい、えっ!? ありがとうございます? あらやだ。私、何も知らなくて。お恥ずかしいですわ。本当にお世話になりまして。ええ、いま本人に変わりますぅ」


電話のテンションが高い。

なにか良いことあったのか?


「すばるちゃん! おめでとう! 今日が発表日だったのねぇ。塾の先生からお電話。お話しましょうって」


電話の子機を無理やり押し付けられる。


「すばる君、本当におめでとう」


なにがめでたいのか?

一瞬分からなかった。


そして、今日が合格発表日で、講師はネットで発表された合格通知を確認して電話をしてきたのだと気付いた。


「せっかくだし合格記念の写真を撮らないか?」

「撮りません」


記念写真って入口のポスターに貼られていたやつだろ?

あんなダサいこと俺がするわけない。


「そうか。気が向いたら、いつでも来てくれていいから。本当に、半年間、よく頑張った。君なら京都でも頑張れる」


繰り返し何度も褒められる。

もしかして、俺が受からないと思ってたんじゃないだろうな。


講師との電話中。

母親はスマホで父親に連絡を取り、姉にメッセージを送り、最後に鮨屋の予約をしていた。

今夜は祝いの鮨を食べる。


本当にめでたいなと俺は思った。



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