第230話:先輩たちと先生とあたしの将来



 校長先生から。


 今年のトランスジェンダー女子の受験生の、面接を、と。


 その面接で、本物の、トランスジェンダーか、偽物女装男子かを、見抜いて、と。


 お願いされましたが。


「では、二月の入学試験の後、面接の時間を設定しますので……」


 と、具体的な日程スケジュールも、渡されたけど。


 八時間目の特別教室、その顧問。


 エリ先生が、代表で。


 臆せず、しっかりと、校長先生、教頭先生に。


「責任は持てませんからね」


 言い放つも。


「はい、みなさんの、屈託のない目で判断してもらえれば、と。それに、対象の受験生には、病院の診断書も提出してもらっていますので」


 なんですと。


「それって、病院のお墨付きはあるけど、わたし達にも確認しろってことです?」


 んー? それって、本当に必要、なのかなぁ……。


「はい、念には念を、と言うことで」


 解せぬ……。


 とは、言え。


「わかりました。みんなも、いい?」


「いいよー、何か、面白そぉー」

「真綾みたいな子が増えるのかぁ……確かに面白そう、ね」


 金髪子先輩、おさげ子先輩は、わりとのり気?


 面白イベントだと思えば、まぁ……。


 でも。


「面接の後は知りませんわよ? わたくしたちも三年になりますし、さすがに引退させていただきたいところですわね」


 ぱっつん子先輩。


 しごく、まともに、順当に、当然のように。


 でも、そっか。


 今、二年生で、もうすぐ三年になる、先輩たち。


 大学受験やら、進学とか考えたら。


 さすがに。


 のんびり、八時間目とか、やってらんなくなる、よね?


 それでも。


「えー? 一学期とか、夏休みくらいまでならいいんじゃ?」

「そうよね、部活とかでも夏のインターくらいまでは三年もやってるよね」


 金髪子先輩と、おさげ子先輩は、少なくとも夏までは続ける気、まんまん?


 ぱっつん子先輩は、と言えば。


「運動部じゃあるまいし……ふたりは成績良いからいいですけど、わたくしは……」


 あぁ、察し。


「大丈夫だいじょうぶ、ウチらが面倒見てあげるからー」

「そうそう、今までもそんな感じだったでしょ?」

「むぅ……」


 そんな、先輩たちのやりとりの、横。


 エリ先生が。


「あのぉ、校長、教頭、わたしも三年目ですし、そろそろクラス担任とかぁ……」


 と、進言。


 するも。


「沢田先生には、もう一年、こちらの顧問をぜひともお願いしますわ。その成果によっては……」


 教頭先生、一刀両断。


 一刀両断、好きだねぇ。


 ずばっ、ずばっ。


 まぁ、歯に衣とか、遠回し、とかで。


 誤解するより、されるより。


 それより。


 あたしも、すでに以前にも校長先生から頼まれた、通り。


 協力は、まぁ、やぶさかでは、無いし。


 新入生の、女装男子?


 トランスジェンダー女子。


 身体は、男の子だけど、心は女の子。


 レイちゃん。


 菅原レイちゃんと、同じ。


 あたしとは、少し違う。


 どこが違う?


 この、東雲女子高校に通う間だけ、ってあたしと。


 一生?


 ずっと?


 女であり続ける、あり続けたい、レイちゃん。


 今、一瞬を切り取れば。


 ほぼ、違いは無い、のかもしれないけど。


 その先。


 将来を考えたら。


 その、違いは、大きい。


 と、思うんだけど。


 はて?


 あたしの、将来って?


 この、女子校を卒業した、その後は?



 あぁ。


 もうひとつ、校長先生から、言われた事、思い出した。


 教師になって。


 この東雲女子の、先生をやらないか、って。


 しかも、女装して、トランスジェンダー女性として。


 え?


 あんまり深く考えてなかったけど。


 あたしも、トランスジェンダー女性、に?



 あ。


 もういっ個思い出した。


 二月と言えば、レイちゃんとアルバイトもあるね。


 今は。


 今を。


 がんばろう!




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