第142話:八時間目の授業はいつまで続く?



「そういえば」

「何?」


 ぱっつん男先輩の合唱コーラス発表が終わって。


 一年一組の教室に戻って、クラスメイトと先輩たちのタワムレをサポートした後。


 あたしもクラスのお留守番が終わったので、八時間目の授業で使っている空教室へ。


 エリ先生も合流して、いつものメンバーで、おくつろぎしていたら。


 おさげ男先輩が。


「八時間目のメンツで写真でも飾ろうって言ってたけど」


 確か、エリ先生発案、だったかな?


「あぁ、そういえば、そんな事も言ってたっけねぇ」


 そのエリ先生も、忘れてたっぽい。


 だから、あたしも。


「新しい制服の事だとか、クラスの出し物にかかりっきりでしたしねぇ」


 ちょっともったいない感もありはするけど。


 手がまわらなかったのは、致し方ない。


「来年は、なんか考えるかー」


 ちょ、金髪男先輩!?


「来年って、来年も続けるんですか、八時間目コレ


 そこんとこ、どうなんですか?


「知らん」


 知らんのかーい。


「実際、どうなんです? 先生」


 一番情報を持っていそうな先生に振ってみる。


「知らなーい」


 知らんのかーい。


「いつまで、ってのも聞いてないしねぇ。とりあえず、今年と言うか、今期いっぱいは続けるとして、来年は……」


 先生も、先の事は聞いてない、か……。


「学校も何も考えてないんじゃないかな?」


 それは、めっちゃ。


 アリエル。


「なんかもう、あれもこれも、実験、みたいな感じですよね」


「んー……」


 思案顔の先生。


 しばし、思考をめぐらせた後。


「試行錯誤、って言えば言葉はいいけど、ほんと、実験だよねぇ」


 先生も、同じ結論。


 ある意味、あたしたちは。


「実験動物かっ!」


 うむ、まさに、金髪男先輩の、おっしゃる通り。


「まぁ、その分、色々やらせてもらってるし、いいんじゃないか?」


 メガネまで男子風に変えた、おさげ男先輩。


 確かに、いろんな事、やってますけど、ね。


「だよなー、このズボン動きやすくてめっちゃいいしなー」


 金髪男先輩は、スラックスがいたくお気に召されている模様。


 かわいい。


真綾まーやにも会えたし、な」


 おっと、何を恥ずかしい事を、ぱっつん男先輩。


 さっきの合唱コーラスから、なんかキャラが変わってしまわれました、か?


 そのぱっつん男先輩が、続ける。


「このスラックスもそうだけど、いろいろ変われたのも、よかったし、な」


 少し、遠い視線。


 何かを見上げるように、どこか、遠いところを見るように。


 ふ、と、皆が、ぱっつん男先輩と同じ方向を、見る。


「変わったと言えば、真綾ちゃんが一番変わった、かー?」

「最初の状態、よく覚えてないんだけど?」

「むすっとした男子がしの女の制服着てて違和感バリバリだった」

「そうだっけ?」


 ちょちょ、っと。


「むすっとしてたのは、先輩たちもでしょ」


 言い返す事は、言い返す、よ?


「あはは、確かに」


 先生は、はっきりと覚えてる、のかな?


「まぁ、とりあえず、もうしばらく、よろしく頼むぜ、真綾ちゃん」

「オレっちも、よろしく頼むー」

「右に同じ」


 ぅう。


「こ、こちら、こそ」


 はい。


 そんな感じで。


 まだ、少し。


 八時間目の授業、続きます。





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