第101話:菅原さんの下着事情



 金髪子先輩宅のキッチンに菅原さんも来てもらって。


「シズさんすみません、ちょっと場所、お借りしますね」

「どうぞ、ご遠慮なく。わたくしはお昼の準備を進めておきますので。何か必要がありましたらお声掛けいただければ、と」

「ありがとうございます」


 本当なら、シズさんを手伝ってお昼の準備をする予定だったけど。


「菅原さん、こっちへ」


 キッチンも広くて、食材を並べておく台もあり、休憩用だろうか、簡易な椅子もおいてあるので、その椅子を使わせてもらって。


 菅原さんと並んで腰かけて。


「えっとね、菅原さん」

「はい……」


 きっと、菅原さんも、さっきの話を蒸し返されるだろうことに気付いてるんだろう。


 ちょっと戸惑い気味?


 でも。


「ブラ、着けてない、着ける必要が無いって言ってたけど」


 ほら来た、って表情、ね。


「女の子なら、やっぱりブラは着けるべきだと思うの」


 だから、そんなあたしの投げかけにも。


「どうして?」


 って、素で聞き返してくる。


 やっぱり。


 は。


 男の身体に縛られてるところがあるんじゃないかな?


 だから、男の身体に、ブラジャーは必要ない、って。


「ブラは女の子にとってはファッションの一部なのよ」


「え? でも、下着とか誰かに見せるものでもないし」


「うん。確かに見せるものではないけど」


 あたしもまだ数か月しか着けてないけど。


 雪人さんが言ってた『着けてないと不安になる』って言うのもわかるようになったし。


「可愛い下着、着けてるだけで気分も変わるし、逆に気分に合わせていろんな下着を着ける楽しみもあるし」


「それは……わからなくも、無いけど……」


「菅原さんは、下は女性用履いてるでしょ?」


「う、うん」


 さすがに、ちょっと直球でお互いに恥ずかしい話題ではあるんだけど……。


「ブラとおそろいのペア、とか、テンションあがっちゃうよ?」


「で、でも、ブラって、結構、お高いでしょ? 無駄なモノにお金、使いたくないわ」


 あ・あ・あ……。


 そうか、その罠が……。


 確かに。


 あたしの場合、学校の校則のこともあって、お母さんが喜んで買ってくれてる、ってのも大きいか……。


 菅原さんの場合、自発的に女性化してるから、周りからの支援は一切、無いって事、なのかな。


 しまったなぁ。


 こればっかりは、どうしようも無いわよね……。


 でも。


「そうね……でも、やっぱりもったいないよ。こんなに可愛いのに、女の子らしい膨らみを加えればもっともっと可愛く、女の子らしくなれるのに」


「う……それは……」


 身体が男だから、と、あきらめている部分もあるんだろう。


 あたしも最初は、ブラは着けてても、中身には頓着してなかったし。


 先輩……おさげ子先輩に指摘されて、中身の上げ底を仕入れた経緯もあり。


 菅原さんに、そのメリットを上手く伝える方法は?


 ふ、と、自分の、考えて、みる。


 ふにゅん、と、軽く、柔らかな、手ごたえ。


 そうだ!


 あたしは、おもむろに立ち上がり。


 その場でブラウスのボタンを外し始める。




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