第99話:菅原さんの「まさか」


 金髪子先輩のお宅へと向かう道中。


 ふと、後ろを歩く山田くんに話しかけられて、少し菅原さんから離れる。


 山田くんと他愛もない受け答えをしてから、菅原さんの方を見ると。


「?」


 菅原さんの背中に、何か違和感を感じる。


「? どうかしました? 園田さん?」


 菅原さんもウチの表情を見て、キョトンとしている。


 ウチも改めて菅原さんの横に並んで、改めて横から彼女(?)の全身を見てみて、違和感の正体に気付く。


「菅原さん……ブラトップ着てる?」


 ウチの問いかけに、さらにキョトンフェイスな菅原さんは。


「え? 何、それ?」


「えっと、カップ付きのキャミソール、みたいな?」


「あー、うん。キャミは着てるよ?」


「え? じゃぁ、ブラは?」


 そう。


 ワンピの上にカーディガンとは言え、ほぼシースルーに近く、白ワンピの下もある程度、形が浮いて見える。


 その割に、ワンピの背中に、ブラのラインが全然、影も形も、無い。


 それが、違和感の、正体。


 だから、キャミソールの代わりにブラトップなのかなと思ったんだけど。


「ブラ……ブラジャー?」


「うん、ブラジャー」


「え? ブラジャーなんて必要ないでしょ?」


 とんでもない回答に、ウチの方がキョトン。


 一瞬、菅原さんが何を言ってるのか、わからなかった。


「いやいや、女の子なら、ブラ必須でしょ?」


「え? だって、身体は男なんだから、着ける必要、全然、無いよね?」


 えー……。


 追い打ちをかけるように、菅原さんが続ける。


「着ける必要が無いって言うか、着ける意味が無いって言うのかな?」


 まさかの。


 いや。


 え?


 えぇえええええええ!?


 まあやは、こんらん、している。


「え? でも、女の子、なんだよね?」


「うん、でも、身体は男なのよね……残念なんだけど」


 あぁ……。


「え? 園田さんはブラジャー、着けてる、の?」


 逆に、菅原さんが、ドン引き風に、ウチに問い直してくるけど。


「うん。もちろん」


 自信をもって、自信たっぷりに、文字通り、胸を張って。


「うわ……なんか違和感あると思ったら、もしかして、ブラジャーの中にも何か入れてる?」


「うん。専用のパッド? みたいなのがあって、それで盛ってるのよ」


「えー? そこまでするの??」


 驚きの、菅原さん。


 いや、待って。


 何?


 え?


 心は女の子。


 身体が男で、違和感があって、女でありたいと願うんだったら。


 あれ?


 え?


 まぁやは、さらに、こんらん、している!?


「ブラジャーとか、自分で買いに行くの?」


 混乱に拍車をかけるように、菅原さんからの、問い。


「うん。通販で買ったりすることもあるけど、お店に買いに行くこともあるよ?」


「わたしは下着はお母さんに買ってきてもらってるなぁ……」


 あ。自分で買いに行かないんだ。


 下着は、ってことは、ショーツは女性用かな?


「えっと、女装専門のショップがあって、ウチはそこで買ってるよ」


「女装専門ショップ……そんなのが、あるんだ!」


 驚かれている、模様。


 あぁ。


「じゃあ、菅原さんは、洋服とかコスメは自分で買うの?」


「うん。ファッション雑誌とかで勉強して、自分でお店で買うよ。コスメもお母さんに教えてもらって、ほぼ独学だけど」


 あら?


 これ……。


 あれ?



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