第40話:金髪子先輩のおうちへ、ゴー



「ようこそ、ウチのウチ!」

「テンション高いっすね、先輩」

「そりゃ、男の子を家に招くなんて、初めてだもん」

「まぁ、ウチも女子のお宅訪問なんて、初めてですけどね」


 と、言う訳で。


 先週のおさげ子先輩との『課外授業』の最後。


 次は、小坂『金髪子』ミリー先輩、と。


 いや、よくよく考えてみたら、


 『課外授業』って。


 なんかアレな響きもあるけど。


 違うから、ね?


 全然、違うから、ね?


 誤解しちゃ、だめですよ?


 って、誰に言ってるんだ、ウチは。


 それはともかく、翌週の土曜の午後。


「お邪魔します」


 金髪子先輩に案内されて、家の中へ。


 他人ヒト、ましてや、女子の、先輩のお宅。


 緊張する。


 しかも。


 女装で。


 女装とは言え、いつもの『しの女』の制服姿なので、まだマシか……。


 金髪子先輩も、自宅とは言え、課外『授業』にあわせて、制服姿。


 身長の問題もあり、『しの女』独特の制服のミニチュア版のようなサイズ。


 正直。


 可愛すぎる。


 金髪ショートのアクセントがまた、清楚なデザインとのギャップになって。


 お人形さん、と言うと怒られるかもしれないが。



 そんな金髪子先輩のお宅。


 予想通りと言うか、予想以上と言うか。


 そういえば、三人の先輩の中で一番大きい、とか言ってたっけか。


 これも緊張の一端ではあるが。


 通されたリビングで。


「でかっ!?」


 つい、口走ってしまった……。


「あはは。大きいでしょー」


 おさげ子先輩との課外授業で、一番最初に行った家電量販店。


 そこで見た、大きなサイズのテレビ。


 『それより大きいの、ミリの家に置いてあるよ』


 たしかに。大きい。


 デカイだけではなく、左右には……多分、専用のスピーカー。


 テレビの下にもスピーカーやら、他にも何やら機材っぽいのが並んでいる。


「これで映画見たり、ゲームやったりするとねー」


 うんうん。すごい、良さそう。


「眼が疲れるんだよねー」


「え?」


「ほら、画面が大きすぎてさ、全体観るの、大変なのよ」


「はぁ……」


「まぁ、モノは試し、ちょっと何か映してみようかー……ほれ、ココ、座ってー」


 リビングのソファ。


 テレビ画面から随分と離れているけど、このくらいの距離でも近いってコトかぁ……。


 そのソファも、ふっかふかで甘美な座り心地。


 いいなぁ、これ……。


 ソファの前にはロウテーブル。


 そこへ。


「いらっしゃいませ。こちらお飲み物になります」


 と。


「!?」


「あ、シズさん、ありがとー」


 ロウテーブルに、すっ、と、置かれるお茶。


「ごゆっくりどうぞ」


 そして、すっと去ってゆく。


 和服に割烹着の、女性。


「……お母さん?」


「んや、お手伝いさん? 家政婦さん? まぁ、住み込みで来てもらってるから、お姉さんみたいな」


 ぅおぉおおお。


 家も大きいから、お手伝いさんとか居てもおかしくはないのか……。


 うん。


 別世界と言うか、別次元。


「さーて、じゃあ、セットするねー」


 ウチが呆然としている横で。


 金髪子先輩がタブレットを操作し始めると。


 窓のブラインドが降りて、照明が薄暗くなり。


 テレビのモニターが点いて。


「さて、何、観よっか?」




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