憧れ≠

 あるところに 一匹のウサギと 一人のヒトの子が いました


 二人は 友達 です


 いつも 一緒に います


 しかし いつからでしょう


 二人の思いが すれ違うようになったのは





『私は アナタが 好き』


「ボクも キミが 大好きさ」


『私は アナタみたいに なりたい』


「キミは ボクには なれないよ」





 ウサギの好きは 『憧れ』で


 ヒトの子の 好きは 『友達』として


 同じ景色を見てきた瞳は いつしか

 違う思いを写していました


 ヒトの子の言葉に ウサギは 絶望し


 ウサギの言葉に ヒトの子は 悲しみました


 二人の距離は 少しずつ 離れていきました





 離れた 距離は 


 見えてる距離より ずっと遠くい


 距離は 段々 長くなり


 取り返しがつかなくなる




 ソレは 嫌


 思いが違っても 『好き』は変わらないから



 ヒトの子が 言います


「憧れは悪いことじゃないけど」


「憧れ=自己否定になったらダメ」


「ボク(憧れ)と君(自分)とのギャップに 


押しつぶされちゃう」


「君は君 ボクじゃない」


「どんなに頑張っても ボクにはなれない」


『そんな……』


『じゃあ 私は ずっと私のままなの…?』


「ソレを決める事が出来るのも 君だけさ」


好き憧れを捨てて 考えてみて」



 ヒトの子は ウサギの 影がさした 瞳を見つめて言いました



「君はどうしてボクが好きなの?」

 


 ウサギは 出会った日を 思い出しました

『明るく 元気な アナタが好き』


 ウサギは 一緒に遊んだ 楽しかった日々を 思い出しました

『人と違っても 笑える アナタが好き』


 ウサギの楽しい思い出には いつも ヒトの子の笑顔がありました

に 新しい世界を教えてくれた アナタが好き』



 言葉と一緒に 陰りがあった赤い瞳から

 キレイな涙が 一つ


 一つは 二つに


 二つは 四つに


 後から後から 溢れ出し 


 全部をキレイに 洗い流す


 

『ボクも キミが 大好きさ』



 ヒトの子が 涙を流す ウサギに寄り添い


 涙と一緒に その身体を 拭いました


 『ボクは キミの純白の毛が 宝石みたいな赤い眼が 大好きさ』


 ウサギの涙は止まりません


 ヒトの子は ずっと 伝えてくれていたのです


 自分の良さを 本当は 何を求めているのかを


 涙で洗われた 心と 身体


 白と赤


 ウサギが 『憧れ』たのは ヒトの子の

 姿ではなかったのです


 そのあり方が 綺麗で 眩しくて 鮮烈で

『憧れ』たのでした



『憧れ』が あまりに 眩しくて 


 自分が 見えなくなっただけ




 『憧れ』≠『自己否定』


『憧れ』≒『羨望』


『憧れ』=『自己肯定』『自己研鑽』


 

 なりたい 自分は 程遠く


 けれど 確かに 歩く先


 決して 取り下りたりした先になく


 自分を磨いて 輝くくもの






『私はやっぱり アナタみたいになりたい』






 そう言い 泣き笑った ウサギを見て


『キミならなれるよ』


 ヒトの子も 輝く 太陽のように 笑いました

 

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