ギャンブルプリンセス!

XX

誕生! パチンコプリンセス!

 私は賭魚吐夢子かけさかなとむこ

 中学2年生の14才。

 座右の銘は「一獲千金」

 好きなものは「SSR」


 私は今、遅刻ギリギリに家を飛び出して、通学路を学校目指して全力疾走していた。

 この、信号に捕まったり何かアクシデントが起きたら即遅刻確定の危機感……たまらない!


 それを思えば余裕を持って早出して、勝ち確の登校なんてクソよ!


 ちなみに今日は中間テストで。

 私は勉強もヤマを張って勉強した!

 外したら赤点確定!


 今日の天気は曇りで、降水確率は80%!

 なのに私は傘をわざと持ってこなかった!

 テストが終わるまでに降り出したら私の負け!

 ゾクゾクする!


「素晴らしい! キミこそギャンプルプリンセスになるべき逸材だ!」


 すると公園の前を駆け抜けているとき。

 妙な生き物に声を掛けられた。


 エリンギに手足と人面がついている謎の生き物。

 羽根も無いのに宙に浮いて、人語を話す。


 ……何者?


「僕はミズハラ。ギャンブルの精霊」


 謎の生き物はミズハラと名乗った。

 彼はそう言って、私にコンパクトを渡して来た。

 掌サイズで、カラフルなビーズでゴテゴテと装飾されている。


「……これは?」


「ギャンブルパクト。変身アイテムさ」


 これを使って、キミはギャンブルプリンセスに変身することができる。

 ギャンブルプリンセスは管理国家マニンゲンと戦う伝説の戦士。

 おめでとう! キミはギャンブルプリンセスに選ばれたんだ!


 ……私はまだ、ギャンブルプリンセスをするとは言って無いんだけど。


 まぁ、良いか。


 貰えるものは全部貰うのが私の方針なので、私はその話を受けることにした。

 ギャンブルパクトを受け取り、制服のスカートのポケットに仕舞った。


 すると


「早速だが出番だ! マニンゲンの連中が、朝のパチンコ屋の前で暴れている!」


 罪も無いギャンブラーたちを守るんだ!


 そう、ミズハラが一気にまくし立てて来た。


 ……え~?

 今から~?


 ちょっと思ったけど。


 ……まぁ、良いか。

 遅刻の回数が50回から51回になっても大して影響ないもんね。

 すぐに思い直し。


 それに、こっちの方が面白そう。


 だから私は


「案内して! ミズハラ!」


 私は駆け出した。




「フハハハハ! 平日の朝からまともに仕事もせんとパチンコ店に行列を作りしパチンカスどもよ! この管理国家マニンゲンの使者リ・ワークが貴様らの性根を叩き直してくれる! 行け! チャレンジャー!」


「チャレンジャー!」


 私が近所のパチンコ店に駆けつけると、朝から大行列を作っている人々が、身長5メートルはある半透明の触手の怪物に追い回され、捕まえられて体内に取り込まれていた。

 怪物に取り込まれた人々は、半透明の怪物の体内で、みるみる生きる自信と気力を与えられ、解放されると「オレたちでも今すぐできることから始めよう!」と言って駆け出していく。


 多分あの人たち、今までの生き方を強制的に変えさせられ、自由人からくだらない社会の歯車に変えられてボロボロになって生きていくんだね……


 酷い……!


「フハハハハ! とっとと社会の立派な構成員になり、社会貢献して感謝され納税するがいい!」


 怪物の上位者と思われる、赤い髪をした鬼のような男性が、勝ち誇り、笑っている。

 だから私は


「そこまでよ!」


 飛び出して……言ってやった!




「何奴!?」


 鬼のような男性がそう言って来たので


「伝説の戦士! ギャンブルプリンセスよ!」


 まだ良く分からないけど、実名を名乗るのは危ないのでそう名乗る私。

 鬼の男性は


「ギャンブルプリンセスだと!?」


 そう問い返してきたので


「人間の自由と平和を守る正義の戦士! 覚悟しなさい!」


 私が指を突き付けて宣言すると、鬼の男性は


「自由と平和って、我は社会不適合者に自信と気力を与えて、再起を促しているだけだぞ!?」


 なんか言い訳してきたので


「そういうのを有難迷惑って言うのよ!」


 はい論破!

 鬼の男は納得できないようで


「お前は自分が何を言ってるか理解しているのか!?」


 完全に論破されたのが悔しいのか、鬼の男性は明らかに不愉快そうな表情になってそう言って来た。

 ええい煩い! 見苦しいぞ!


「吐夢子! 変身するんだ!」


 ミズハラの言葉。

 私は頷き。


 ギャンブルパクトを開けた。


「プリンセス! ギャンブルフォーメーション!」


 ……頭の中に何をやるべきかが書き込まれていく!


 くるり、くるりとギャンブルパクトの中のサイコロのマークを回し、数字をピンゾロに合わせる。

 その瞬間。


 私は光に包まれ、輝きの中変身する。


 ピンクを基調とした、可愛いドレス。

 フリフリ衣装の、プリンセスに。


 変身完了した私は


「街角の勝負師! パチンコプリンセス!」


 ポーズと共に名乗りを挙げる。


 鬼の男性は動揺している!

 今がチャンスだ!


 私は両掌を鬼の男性に向けた。


「プリンセスサウザントパチンコブラストォォォッ!」


「ギャアアアアアア!」


 私の掌から亜光速に加速されたパチンコ玉が大量に撃ち出され、鬼の男性を撃ち抜いていく。

 パチンコの玉は質量は小さいけど、亜光速にまで加速すれば恐ろしい威力になる。

 鬼の男性はズタボロになって吹っ飛んだ。


 よし!

 チャンスは逃さない! それが勝負師の鉄則!


「チャレンジャー!」


 私はとどめを刺すために踏み込むと、触手の怪物が回り込んでくる。

 ふっ、身の程を知りなさい!


「プリンセスサウザントパチンコブラストォォォッ!」


 もう一度、必殺技。

 私のプリンセスサウザントパチンコブラストは無敵だ!


「チャ、チャレンジャアアアアア!」


 触手の怪物が、パチンコ玉でズタボロになっていく。

 私の気分は高揚し、自然と口元に笑みが浮かんだ。


 だけど


「……す、すまぬチャレンジャー……お前の忠義、無駄にはせん!」


 その隙に。

 鬼の男性は逃げてしまった!


 ……クソッ!


 逃げやがって! クズがッ!


 私は怒りが収まらないので、パチンコブラストで虫の息になっている触手の怪物を蹴っ飛ばした。

 こいつさえ邪魔しなければッ!


「チャレン……ジャー……」


 それがとどめの一撃になったのか。

 怪物はか細い鳴き声を残してグズグズに溶けていく。


 ……それでいくらか溜飲を下げる私。

 フン……


 私は怪物の溶けた粘液に、唾を吐きかけた。

 ムシケラがッ!

 この下等生物めッ!


 すると


「素晴らしい実力だよパチンコプリンセス! これからも頑張ってね!」


 そんな私に、キノコの妖精ミズハラが寄り添い、労ってくれた。



 私はギャンブルプリンセスの1人、パチンコプリンセス!

 人間の自由と平和を守る伝説の戦士!

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