第42話_宿へ

宿に戻り夕食をいただいた後、二人は疲れながらも部屋に戻った。

扉を開けると、彼らを迎えたのは質素ながらも清潔感のある部屋だった。

ベッドは一つだけで、他にはテーブルと椅子、そして小さな窓があった。


「さてと、なんか今日は疲れたな..早く寝よ」

村田が部屋に入りながら言った。

彼の声には、長い一日を終えた安堵感がこもっていた。


「ライト、お前ベッド使っていいぞ、俺は床で寝るから」

と、村田はライトに気遣いを見せた。


しかし、ライトは少し甘えた声で

「シュン一緒に寝ようよー」

と提案した。


「朝起きたら全身打撲になってそうだからやだ」

村田は即座に拒否した。

彼はライトの寝相の悪さをよく知っていた。


「いいじゃんせっかく城下町についたんだしー」

ライトは城下町の新鮮な体験に浮かれている様子だ。


「いや、何がせっかくなんだ..とにかく俺はもう寝るからな、早く寝ろよ」

村田は最後の言葉を投げかけ、床に布団を敷き始めた。


横になっていると後頭部にふわりと何かが当たった。

どうやらライトが枕を投げてきたようだ。


あえて何も反応はせず、そのまま様子を見ることにした。


直後背後で風のような音が聞こえ、

まさかと思い立ち上がりながらライトの方を向いた時、

ライトが風魔法を使っているのを目撃した。


「..わかったよ、俺もベッドで寝るからそれはやめろ」

と、村田は少し呆れたように言いベッドの端に腰掛けた。

ライトは得意げに笑みを浮かべ、村田の隣に小躍りしながら座った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る