第27話_恩返し

時間は少し遡り、村田とベルタが家を離れたころ。

ライトは、遠くから聞こえる騒がしい声にゆっくりと目を開けた。

村田がどこにいるのか気になり、彼は声のする方向に足を向ける。

歩いていると、村の入り口で慌ただしく動くガガリアの姿があった。


「おやライト君、どうしたのかな?」

彼の声は心配と温かさを含んでいた。


ライトは少し戸惑いながらも、

「うん、シュンがどこかに行っちゃって..」

と答えた。彼の声には、失われた安心感と村田を探す切迫感が混ざり合っていた。


ガガリアは、ライトの言葉に頷きながら、

「シュン?..あぁ、村田さんのことか。彼なら今怪我人の治療中だよ」

と優しく説明した。


「怪我?何かあったの?」

ライトの声は心配と好奇心で震えていた。


「うちの村人が熊に襲われたみたいでね、これから討伐に向かうところなんだ」

ガガリアの言葉には重みがあり、ライトの表情も真剣なものに変わった。


「ライト君、君は家に戻っていなさい。村田さんもじきに戻ってくるよ」

ガガリアは優しくライトを促したが、ライトの心はまだ落ち着かなかった。


「..ねぇ、それ僕も連れて行ってくれない?」

彼の目には、何かを助けたいという純粋な意志が輝いていた。


しかし、ガガリアは頭を横に振り、

「..君は魔法が使えるみたいだけど、流石に客人を参加させるわけにはいかないね」

と優しく断った。


「なんで僕が魔法使いだってわかったの?」

ライトの目は驚きで広がった。


ライトの純粋な疑問に、ガガリアは父親のような優しさで答えた。

「私も魔法使いだからね、なんとなく。それに君は魔力ダダ洩れだからわかりやすいね」

その言葉に、ライトは驚きと新たな発見の喜びを感じ、少しの間、その場に立ち尽くした。


「さてと、そろそろ私は行かないと。家から出ちゃだめだよ」

とガガリアは言ったが、ライトは一歩を踏み出し、切実な願いを口にした。


「僕、助けられてばっかりで..シュンみたいに僕も何か力になりたい。魔法使いとして、恩返しがしたいんだ」

とライトは力強く言い、その目には決意の光が宿っていた。


「だからお願い。僕も連れて行って」

とライトはガガリアに懇願した。


「ふふ、君は優しい子だね。..わかった、でも私の傍から離れないこと、それだけは守ってくれ」

ガガリアはライトの熱意に打たれ、彼の参加を許可した。

彼の言葉には、ライトへの信頼と、彼を守るという強い決意が込められていた。

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