第2話_謎の少年
村田はやさしい手の揺さぶりによって目覚めた。
彼の瞼がゆっくりと持ち上がり、目の前の景色が徐々に明瞭になる。
彼の周りには飛行機の残骸は一切なく、さざ波の音だけが静かな海岸に響いていた。
彼の体は、波に洗われる砂のように、無防備に倒れ伏していた。
しかし、彼の目に飛び込んできたのは、
少年の顔が心配そうに覗いている光景だった。
少年の温かな手は、村田を優しく揺さぶり続けていた。
その少年は、青い瞳に白い髪を持ち、黒いマントコートとアラビアンパンツで身を包んでいた。
中世風のシャツが彼の白い肌を隠し、黒いとんがり帽子が彼の異国風の外見を際立たせていた。
「おにいさん、大丈夫?」
少年の声は心配と優しさに満ちていた。
村田は少しの間、呆然としたが、やがて
「あ、あぁ、大丈夫だ。..ところでここはどこなんだ?」
と疑問を投げかけた。
彼の声は砂浜に打ち上げられた海草のように、弱々しくも緊急を帯びていた。
「ここ?ここはイファスアの街の近くの海岸だよ」
と少年は明るく答えた。
村田の眉間にはしわが寄り、
「イファスア..アフリカにそんな名前の街なんてあったか?」
と困惑しながらも訊ねた。
少年の顔は無邪気な好奇心で輝いており、
「おにいさんはどこから来たの?」
と返した。
「俺は..確か日本からJOCVに参加するためにアフリカへ向かう飛行機に乗って..」
と村田はここまでの経緯を説明し始めた。
「ニホン?ヒコーキ?それって何?」
少年の好奇心むき出しの質問に対し村田は答えようとしたが、今はそれどころではないため後回しにした。
「なぁ、ここら辺で他に俺みたいな服装の人たちは見なかったか?」
と村田が再び口を開いたとき、その声は微かな希望を含んでいたが、
「見てないよ、見つけたのはおにいさんだけ」
という少年の答えに、その希望は霧のように消え去った。
「そうか、俺だけか..」
と村田は落胆し、項垂れた。
しかし、少年は明るく、
「んー、とりあえず僕の家に来る?すぐ近くだよ」
と提案した。
「いいのか?」
村田は少し眉をひそめながら、少年に確認を求めた。
その目はまだ警戒の色を隠しきれていなかった。
「全然大丈夫だよ」
少年は笑顔で返答し、その澄んだ瞳と笑顔には誠実さが溢れていた。
彼の態度が村田の心の壁を少しずつ解きほぐしていく。
村田は砂にまみれた手を握りしめ、深呼吸を一つしてから、意を決して言った。
「ありがとう、そうさせてもらうよ」
彼の声には感謝と、新たな決意が込められていた。
「決まりだね!」
と少年は元気よく言い、
「あっ一人で立ち上がれる?」
と村田の肩を支えようとした。
村田は
「ありがとう、大丈夫だよ」
と微笑みながら、ゆっくりと砂から立ち上がった。
彼の体から落ちる砂粒は、彼が今新たな道を歩み始めたことを象徴していた。
「そうだ、名前を言ってなかったね、僕はライト、魔法使いのライト・サノヴァだよ!付いてきて!」
と少年は胸を張って自己紹介した。
村田は「あぁ、俺は村田俊だ、よろしく..魔法使い!?って待てこら!」
と驚きを隠せずに困惑した。
しかし、爆速で走るライトに追いつくため、彼は必死に走り続けた。
足元には、新しい冒険への第一歩としての意気込みが感じられた。
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