君を肴に呑む酒は
小学四年生の時、少しの間だけそろばん教室に通っていたことがあった。
辞めた理由のひとつは、帰り道が怖かったから。
夕方四時から六時まで。
当時の小学生にとって、とても遅い時間。
子供ひとりで歩いてはいけない時間だと思った。
家と家の間から、人ではない何者かの手がぬっと出てきて、足を掴まれるんじゃないか。
そんな想像に押しつぶされそうで、走って、走って、住宅地を、ひたすら走った。
月がどこまでもついてくるのも、恐怖を煽っていたように思う。
いつからだろう。
夜道を怖いと思わなくなったのは。
たぶん、見えないものよりも怖いものを知ったからだろう。
だが、それがいつなのかは覚えていない。
会社帰りに駅前のコンビニで夕飯とビールを買って、住宅街を歩く。
どこまでもついてくる月を連れて帰る。
まぁ、一杯付き合えや。
────月夜
2024.03.07.
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