紫色彗星のフォトンテイル~TS転生令嬢は公爵騎士に溺愛されて~
アイズカノン
第1話 始まるは複雑な恋の物語
月の光の下、白く尾を引く彗星のある夜空。
白銀の鎧を身にまとった白く蒼い髪に銀色の瞳をもつ、強く引き締まった身体の少年とその従者Aが馬を勢いよく走らせていた。
「(少々焦った様子で声を荒らげながら)なんでこんな時に限って『不測の事態』が起きるんだ。」
「(少年を落ち着かせるように)仕方ありませんよ。危険度AAの魔物の巣が見つかってしまいましたから……。」
「(八つ当たりのように)それは分かっている。分かっているが……、なぜ前日ではなかったんだ。」
白銀の鎧の少年は八つ当たりのごとく、従者Aに対して行き場のない怒りをぶつけている。
無理もない、白銀の鎧の少年は今日この日のために日々鍛錬と騎士として人々のために尽力してきたのだから……。
((焦る気持ちを抑えつつ)もう二年も我慢してきたのだぞ。)
白銀の鎧の少年にはある目標があった。
それは……。
((意識を強くもって)今日、俺は告白する。だから待っててくれ、プレシア……。)
8年前から続いている淡い恋心を胸に抱いて……。
そんな白銀の鎧の少年を想いを知ってか知らずか、王宮のとある広間では成人パーティーが始まろうとしていた。
「(少々怯えた声で)うぅ……、本当にこんな格好で出なきゃいけないの……。」
「(後ろに隠れた少女をなだめるように)なに言ってるんですか。本日の主役がこんな弱々しくて良いのですか、プレシアお姉様。」
プレシアと呼ばれた夜空のような深く暗い青いショートヘアにスピネルような深い紫色の瞳、右肩のスピネルから足にかけて放射状に広がる夜空彗星をもした紺と白のドレス衣装の少女は、周りの視線に怯える形で白いピンク色のショートヘアにラピスラズリのような綺麗な蒼い瞳の少女の影に隠れている。
「(弱々しく)だって……、綺麗な人がこんなにいっぱいいるし……。(納得するように)それに比べたらね。アリシア……。」
「(呆れた様子で)はぁ……、ダメですよ。何のために使用人総出で着飾ったと思ってるですか。(励ます声で)私のかっこよくて可愛いお姉様が凛々しく華やかに成人する日を今日この日まで待ってただからね。」
「(ちょっと嬉しそうに)そ、そう……?。(自己暗示を懸けるように)かっこよくて、可愛い私は今日の主役……。ヨシ……。」
プレシアは頬を叩いて自分を奮い立たせる。
アリシアはそんな彼女を後方彼女面で厚かましく見守っている。
「(キリッとした表情で)行ってくるね。アリシア。」
「(高ぶる気持ちを抑えて穏やかな声で)行ってらっしゃい、プレシア姉さん。」
アリシアは小さく手を振って、プレシアを見送った。
彗星の女神が見守る国【コミティウス王国】。
そこでは数えで16歳を迎えると貴族、王族を中心に成人の儀が行われる。
形式は特に決まっておらず。
土地に根付いたものもあれば。
最新のものを取り入れたものまで多種多様である。
そんな成人の儀でここ王宮では顔合わせを兼ねたダンスパーティーが執り行われようとしている。
((あたりを見渡して)カッコつけて入ったけれど、やっぱり恥ずかしいよ……。)
会場に入ったプレシアはさっきまでのイケメン面をどこに置いてきたのか、頬を赤らめらた様子で壁端に逃げている。
((窓から見える彗星を見ながら)なんでよりによって女の子にTS転生しちゃったのかな……。)
プレシアにはある秘密があった。
それは彼女で転生者で、しかも転生前は男性であったこと。
((半ば諦めた感じに)はぁ……、でもちょっと複雑だな……。)
元々男性であったプレシアにとっては転生前の好きと現在の約16年の好きがせめぎ合っていた。
((黄昏れるように)もちろん女の子を愛すの好きもあるけれど……、でも女の子として男の人にドキドキする好きも私の中にあって……うぅ……。)
そんな頬を赤らめて、ちょっと強ばっているプレシアに一人の少年が現れる。
「(少し疲れた息遣いで)おまたせ、プレシア。」
「(少し戸惑った様子で)あ、うん、待ってたよ?、アレク。」
プレシアがアレクと呼ぶ少年は冒頭の白銀の鎧の少年だ。
二人は幼なじみで10年前と2年前にお互いに剣を交わした中でもある。
「(緊張した声で)プ、プレシア。エスコートは任せてくれ!。」
「(頬を赤らめて)う、うん。お願いね!。」
アレクがプレシアの手を引いて会場の中央へ。
程々に緊張しているのか、アレクは視線を真っ直ぐに前へと向いている。
それに対してプレシアは赤くなった顔で床に向けてドレスのスカートを余った手で強く握っている。
「(歓喜を上げながら)見てみてあれ。」
「(推しカプを見るように)あら、あの噂は本当だったのね。」
「「(声を揃えて)あぁ〜、プレシア様~。」」
といった感じで本人たちの気持ちをよそに会場に来ている周りの令嬢たちはあれよあれよとムードを盛り上げる。
「(膝を床につけて)プレシア……。俺と、結婚してくれ。」
「(恥ずかしそうに)ご……ごめんなさい……。」
立ち去ろうとするもこれまでの緊張と恋の重みに耐えきれなくなったプレシアの精神は限界に達してその場で倒れてしまった。
「(少し間を置いて)……はっ、プレシア!。プレシア!。」
アレクはプレシアを抱えて会場を出ていった。
その姿を見た周りの令嬢の歓喜の声援をよそに。
そんなこんなで始まるは、女の子にTS転生したもののどうやって恋愛すれば分からない少女プレシアと、彼女に認められたくて頼られたくて愛されたくて愛している少年アレクのすれ違い恋愛奮闘記である。
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