普段はどこにでもいる女子高生なのに、スイッチが入ると…

奏流こころ

第1話 出会いは突然に

 平凡に、誰とでも仲良く、分け隔てなく、自分の立ち位置をキープし、安心安全に学校生活を送っている。

 それは小学校中学校といじめられていたから、もうあんな辛い目に合わないように、日陰にいる。

 今日も平和に過ごせたことに感謝して、俺は帰路を歩いていた。

 向こうからヤンキーみたいな、いかにも悪い連中3人が歩いて来た。

 俺とは縁遠い、関わることのない連中だ。

 ぶつからないように端っこに寄る。

 これで大丈夫。そう確信していると予想外の展開が起こった。

 ヤンキー3人組の1人が、俺に近付きぶつかって来た。

 その男子は「痛ッ!」と大きな声を発し、左肩を右手で抑えた。

 ヤバいと思っていたら「おい」とリーダー格が声をかけてきた。


「痛がってんぞ、謝れや」

「えっ…と…ご、ごめんっ、なさい」


 それ以上は震えて言葉が出ない。

 マズい、殺される。

 殺気立つヤンキー3人組。


「どうしてくれんの?折れていたらさ?」


 あんなで折れるわけがない。

 ワザとぶつかって来たくせに。

 心の中では何でも言えるのに、表には出てこない不思議。

 それだけ俺はビビっている。


「金、ないの?」


 …そうか。

 こんなことして、弱い立場の人間からお金を奪ってきたのか。

 財布の中には確か1万円が入っている。

 でも、そのお金は参考書に使う為にある。

 勉強は苦に感じていないから、先の内容を教科書以外から得る為にある。

 こんな人達に奪われてたまるか。

 そんな想いはあるのに、目の前の事を早くなかった事にしたくて、2度と会わないようにしたくて。

 手切れ金として渡そうと、鞄の中に手を突っ込んだ時だった。


 シュッ…と風が通り抜けた。

 甘い上品な香りが鼻孔をくすぐる。


「えっ…」


 リーダー格の男子は地面に倒れていた。

 顔面には靴の跡がくっきりとついていた。

 どうやら飛び蹴りをくらって倒れたようだ。

 残り2人は怖いものを見ている表情をしている。

 顔を上げて辺りを見ると、ポニーテールの女の子が凛とした佇まいで立っていた。


「邪魔」


 冷淡な目から伝わる殺気に、腰を抜かしそうになる。

 倒れたリーダーをお越し、両脇で支えて「すいませんしたー!!」と言って居なくなった。

 何だ、この子は。凄い…。


 ドクン…ドクン…ドクン…


 心臓が暴れ始める。

 なんだか体温が上昇している感じがする。


「あの!」


 声をかけると、その子はフッと優しい表情に。


「怪我はない?」


 天使の微笑みを俺にした。

 フワッ…春風が吹いた。


「ありがとう…ございました…」

「気を付けてね」


 軽く手を振り、女の子は振り向く事なく歩いて居なくなった。

 残った俺は暫く呆然としていた。



「嘘だろ…」

剛力ごうりき純華すみかです、よろしくお願いします!」


 あの時の救世主彼女は同じクラスメイトとなり。


「よろしくね」

「よっ…よろしく」


 俺の隣の席に着席した。

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