第45話 事実を並べて

「祭りが開催されたっちゅうことは、雨も降ってなかったってことやねんな。さっき天気予報ではっきりした」

 

「つばちゃんの説を真とするなら、ヘリコプターも嘘だったことになる」


 大分出揃っただろうか。まだ数個足りないが、まぁいいか。


「ここからもうわかるってのかい?そんなことはないはずさ。まだ間違いを指摘しただけだもんね」


「それと付け加えて数日前に雨が降った」


「ちょっと待って。楠木君の中ではもう結論が出てるわけやろ?」


「そうだ」


「なら、先に結論から聞きたいわ」


 確かに、先に結論を出してからでも推論は成り立つ。


「洗車だ」


 と、言ってみたはいいものの、俺が3人の立場なら頭にハテナマークの2つや3つ浮かべてもおかしくはないと思う。案の定、梶原が首を傾げた。


「どういうこと?」

 

「梶原、4月から5月、何がある」

 

 梶原は、目線を上に上げて、更に左右にさせ考えている。


「そんなに難しく考えなくていいんだぞ」


「そんな事言われても、行事なんてないもの」


「誰が行事を思い浮かべろなんて言った。ほら、さっきお前が話してたじゃないか」


 それで思い出せたのか、ああ!と手を叩いた。


「花粉か!」


 そうだ。と俺は頷いた。千春は言う。


「でも、花粉となんの関係があるの?」


「あ、そっか。花粉と雨は」


「さっき梶原が言ってたんだ。雨が降ったら花粉が車にシミになるんだと」


「あ、だから、シミにならないように洗車に行ったってこと?」


「概ね、そうだろうな。洗車なら、子供に見せたい親の気持ちもわかるだろうし、泡で窓が白くなるのを雪と見間違えたり、外が暗くなったのもブラシと間違えたり、シャワーを雨だと見間違えるのも、ブラシが窓に当たる音がヘリコプターの音に聞こえてしまうのも頷ける。子供なら尚更だ」


「たしかにな。天気に雨がなかったんも、まつりが予定通りあったんも、それで辻褄が合うっちゅう訳や」


 一通りの説明を終え、3人の納得した表情を見る。安心して肩の荷が下りた。ただ、梶原の表情が少しばかり暗がりになって見えた。不安になって、聞いてみた。


「…納得行かないところがあったのか?」


 だがしかし、梶原の返答は、見当違いのものだった。


「いや、納得は行ってるんだ。絶対にそれなんだろうと思う。ただ、彼女にどう言おうと思ってね」

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