炭緑の罪滅ぼし
紫水 翠菜
プロローグ
閻魔の低い声が頭に響き渡る。
「いいか、お前達には使命がある。
二千年以上もの長い間修業を積んだ。
ご苦労だったな…。
だが、修業だけでは足りない。
閉鎖的なこの世界で育ったお前達は、心というのもを知らないだろう。
人間界へ降りて、徳を積め。そして、お前達の罪を償え。
必要なものは用意しているから問題ない。
妖の掟は分かっているな…?
お前達のやるべき事はいずれ分かる。さあ…行け…。」
息苦しさから目を覚ますと、
いつもと同じ光景が広がっていた。
水色のシンプルなカーテンから太陽の光が漏れていて、
まるで水の中に居るみたいに白い壁に色が反射している。
人間界に送られてから、数か月が経った…。
最近はいつも閻魔の声で起床する最悪な日々が続いている。
この憂鬱な気分を紛らわす為にベリーフレーバーの煙草に火をつける。
ゆっくり深呼吸し、
口の中に甘いブルーベリーの甘みと葉っぱの焼けた香ばしい香りが広がり
メンソールの清涼感で目が覚めていく。
「はぁ…。やるべき事…か…。」
いつもと同じドアのノックの音。
「鈴、おはよう!朝ごはんできてるよー…って…
こっちにきてから煙草吸うの日課になってる!
身体に悪いよ…?」
「美玲…おはよー。
美玲だってこっち来てからお酒飲むの日課じゃん?
朝ごはんありがとう。これ吸ったらすぐ行く。」
「ああ言えばこう言うんだから…
私、天翼を起こしてくるから、すぐ降りて来てね。」
徳を積む為に、知りもしない罪を償う為に
閻魔が決めた使命の為に…やるべき事を探す為に
先の見えない今日を生きる。
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