ガンズ・ネメシス

甘木智彬

Prologue : 出立


 荒涼とした大地。



 辺境の、小さな村。



「準備よし。忘れ物はないかな」



 大荷物を抱えた少年は、今まさに旅立とうとしていた。



「俺、街で心機一転、やり直すよ」



 振り返って、少年は言う。



「俺には……こいつがあるからな!」



 掲げたのは、愛用のショットガン。



「遺跡荒らしで、一旗揚げてみせる」



「お宝見つけて……たくさん稼いで……」



「美味いものをいっぱい食うんだ!」



「可愛い嫁さんだって見つけてやる!」



「なんだったら車両もほしい!」



「……大物になったら、この村に帰ってくるかも」



「そしたら、次は俺が村長だな! なーんて」



「ハハハッ……」



 冷たい風に、空元気が吹き流されていく。



「……それじゃあ、俺、行くよ」



 荷物を背負い直し、歩み出す。



「さようなら、みんな」



 答える者はいない。



 ただ、ずらりと立ち並ぶ墓標が、静かに少年を見送る。



 荒涼とした大地。



 辺境の、焼け落ちた小さな村。




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