第90話 一瞬をついて
「ウゲツ?」
ぼんやりとしたネココのこえがする。
ウゲツは、ネココの腕を取り、肩に回す。
動きにくいが、ネココとともにここを出なければ話にならない。
多少動きにくくても、隙を突いて外に出なければ。
サカナ大佐は銃をこちらに向けている。
ウゲツの武器は、振り回すものが一つ、名前もよくわからないもの。
ネココとともにでは、振り回すこともこちらにとって不利。
ウゲツは、考える。
サクラの指示は飛ばない。
サクラはどこかにいったのか、
それとも、ウゲツを観察しているのか。
運命をつかみ取るようにできているのなら、
ならば、ウゲツはまだ手段を残しているはず。
ウゲツは根拠薄くそう思う。
ネココの身体に、少しだけ力が戻ってくるのを感じる。
頼りなくふわふわしたネココが、ちゃんといつものネココに戻ってきている。
ぬくもりを感じる。
ネココの意思を感じる。
ウゲツは、ウゲツに関するすべての手段を思い描こうとする。
サクラのように、うまく次が思い描けるわけではない。
でも、隙を作って外に出る。
まずはそれだけを。
そして、ウゲツは一つだけ、手段に思い当たる。
「ネココ」
ウゲツは呼びかける。
目の焦点がネココらしくきれいになった彼女が、
ウゲツのほうを向く。
「走れるか?」
ウゲツはたずねる。
ネココはうなずく。
「どうする気だ?」
サカナ大佐は尋ねる。
銃口はウゲツに向けたままで。
「こうします」
ウゲツは思い描いたそれを行う。
放電銃。それを使う。
帯電防止にと、いつも磁気掃除人がぶら下げている銃を、
ウゲツは腰にぶら下げたままで、引き金を引く。
ウゲツの身体に帯びた電気が、
戦艦ミノカサゴに帯びていた空中の電気も巻き込んで、
空間を切りさく様な爆音を起こす。
サカナ大佐がひるんだそこを、ウゲツとネココは見逃さない。
二人は手をつなぎ、猛然と通路へと駆け出していく。
……さぁ、どうなるかな。
サカナ大佐の頭に乗り移ったサクラは、
面白そうにつぶやく。
「損な役割だな」
……そうかな?
ため息をつくサカナ大佐に、サクラは笑って返す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます