第7話 神の世界の裁判


「ではこれより、殿月之御魂狐大神と、坂東昴…かっこ人間かっことじ……の受験期におけるイザコザ裁判を始める。」



え、神の世界にも憲法とかってあんのか?


俺なんの法律に引っかかってるってんだよ。


つかなんだよ、イザコザって。

そんなふざけた名称でいいのかよ。



「それでは開廷します。被告人は前に出てください」


今回の裁判官らしい神様がそう言うと、俺は何人かの傍聴人たちに背中を押された。



「あなたは被告人、坂東昴で間違いないですね?」


「……はぁ。そうっすけど。」



そのとき……


「キャァ〜ッ!昴さまぁ〜っ!♡」


俺はギョッとした。


そこには縁切りで有名な奥姫神社の神、奥姫おきひめが長い髪とデカい乳を一心不乱に揺らしながら俺に歓声を浴びせていた。


「昴さま今日もイケてるわよ〜♡ファイト〜ッ!」


何故かこの神は昔から、俺のことが大好きだ。

この神の嫉妬を買うと祟が起こるなどという所以があるからか、正直俺はコイツが怖くてしょうがないし、単純に結構ウザイ。



「それではこれから、被告人に対する受験期イザコザ契約違反事件について審理します。

検察官は起訴状を朗読してください」



その言葉に、どこの誰様か知らないが、偉そうな神様的な人が出てきた。

検察官なんて、神の世界にもそんなのがいるのか?!



「被告人は、3年前の7/28から殿月之御魂狐大神と契約を結んでおり、その契約なるものは、坂東昴の仕事補助に対する見返りとして、いつでも好きなだけ好きなものを食べさせ、それらについて坂東昴は狐大神の要望に全て答えなくてはならないといった内容のものであります。」


「ちょ!ちょっと待てよ!異議あり異議あり!!

要望に全て答えるなんて約束してないしそもそも好きなだけ好きな物ってのもっ」


「静粛に。被告人は発言の許可が出るまでは口を開かぬようお願いします。」


「ぐぬぬ……(ムカッ)」


「検察官、続けてください。」


「はい。

しかし、今年の2/1〜3/20前後にあたるまで、受験期シーズンの仕事として狐大神に全て補助させたにも関わらず、被告人は3/1前後〜今日に至るまでその契約を全て破っていたとのことです。

また、狐大神が2度3度注意したにも関わらず、それを全て仕事依頼主の神々や狐大神に責任転嫁し…」



周りの者たちが一気にザワザワとしだし、

俺を見る視線が物凄いものになっているのを感じる。




「4度目5度目の注意のときにはついに全てを狐大神のせいにして怒りだし、全ての食事を質素なものに変えるなどといった嫌がらせを始めたと。

また、これ以上俺に負担をかけたらお前を八つ裂きにする…などと脅し、さらには四六時中誹謗中傷と言った数々の言葉を浴びせ……包丁を持って脅してきたり、溺死させようと水面に顔面を押し付けたり、熱湯漬けにしようとしたりなど……」



「まぁっ、なんと恐ろしい人間の子よ…」

「鬼じゃっ…悪魔じゃっ…あやつは人の子ではないっ」

「ましてや大神様にそんなむごいことをっ…」

「これは殺人未遂…いや、殺神未遂にもあたる刑罰ではないか」

「人間というのはやはり残酷無慈悲で勝手な生き物よ…」


周りが完全に俺に軽蔑と恐怖の目線を向けている。

が、そんなものが見えなくなるくらい俺のイライラは最高潮に達していた。



「以上を踏まえ、今しがた検察官が朗読した公訴事実において、被告人にお尋ねしますが……

この内容になにか異議はありますか。」


「〜っっ!!あるに!!決まって!!るだろぉがぁあぁぁああ!!!!」


「静粛に。被告人、静粛に。

言いたいことがある場合は挙手をしてから、」


「うるっっせえ!!

おいデン!ふざけんなテメェ!!

嘘ばっかつきやがって!!

俺は死ぬほど疲れてる中、お前のわがままに付き合ってやってただろうが!

しかも俺に嫌がらせしてたのはお前だろ!!

風呂に入らず臭くしてやるとか言い出したから俺はお前を風呂に押し込み全身を洗ってやった!

包丁だって、お前がなんか美味いもん作ってみろとかほざくから、こちとらお前なんかのために夜な夜な調理してやってたんだろぉが!!

それを殺人未遂なんかに仕立てようとしてお前ほんっとに中身腐ってんなこの腐り神がぁ!!」



「なんだとこのヘンテコオオバカ人間!!

嘘つきはテメェだ!!

オイラの好きなもん全然くれなくなったじゃねえか!!

気付いてねぇとでも思ってたのか舐めやがってこの鳥頭!」


「あぁん?!お前夜中に俺をパシッときながら何言ってんだ?!

そんな時間にどの高級洋菓子店が空いてるってんだよ言ってみろ狐頭!!」



「双方、静粛に。静粛に。」



俺とデンはハァハァと息を切らしながら1歩も譲る気は無い。

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