迷子

 あれは、引っ越したばかりの頃の事です。


 その日、私は旦那だんなの車で病院に送ってもらいました。


 行きはよいよい帰りはやばい。

 いざ帰ろうとしたはいいものの、どう行けばいいか分かりません。


 公共交通機関を見つけられなかった私は、来た道を帰ろうと思いました。

 そう、旦那が通った自動車専用道路のバイパスの側道そくどうを!


 しかし、それが悪かった。


 進んでいくうちに、道がどんどんせまくなっていくのです。

 とうとう、道がなくなってしまったので、私は別の道を探す事にしました。


 しかし、道を探したところで、どうすればいいのか分かりません。


 それでも、私は知らない道をどんどん進んで行きます。

 歩いてるうちに知った道に出る事が出来ると考えたのです。


 私は、まだ傷の浅いうちに、そんな都合のいい事が起きるはずがないと気付くべきでした。


 知らない場所。

 おまけに方向音痴ほうこうおんち……。


 そんな状況で、家に帰りつける訳がないのです。


 途方に暮れた私は、仕事中の旦那に電話をしました。


 旦那はそれを聞いて、非常事態だと、仕事を抜けて来てくれると言うのです。


 神! だと思いました。


 しかし、場所を説明しようにも、私は自分がどこにいるかすら分からないのです。


 説明に困ってしばし考え……。

 私は、伝えました。

 脳神経外科のうしんけいげか看板かんばんが見えると!


 しかし、Googleナビのない時代。

 迷った人を探すのは大変です。

 その上、目標物は看板なんです。


 そんな難しい条件の中、旦那は私を発見してくれました!


 本物の神に違いありません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る