第25話
「あなたは何を言ってるの! そんなことできるわけないでしょう!」
コーセイの提案に近見が噛みつく。
「ルールにあるのは【生還の権利は勝った「チーム」にのみ与えられる】、この一文だけだ。相手側と手を組むことを禁止していない。もしルール違反なら、オレも『天罰』を受けるはずだ」
本物の銃を持ち込んでも、発砲せずに脅しに使うだけなら許される。ならば神の『天罰』の範疇はルールをあからさまに逸脱しなければ何をしてもいい。コーセイは天性の閃きで、そうした抜け道を突くのに長けていた。
「だからってそんな取り引きを堂々と持ちかけるなんて……」
「わたしはその提案、飲んでもいいわ」
そう言ったのは小林だ。
「あの女を殺して、沖島さんを生き返らせてくれるなら……よろこんで手を貸すわ」
「なっ、やめて! 後もう少しで勝てるのよ? 協力しなさい! ……こうなったら言うわ、私には数字が見えているのよ。ここで【8】の
「ふざけんな! 僕を切る? その言葉で近見さんの人間性がよく分かりましたよ。僕は乗りません」
もう一人の劇団員、原田が近見を睨み『パス』を宣言する。
「ち、違う! 違うのよ誤解しないで! 今のは言葉のあやで……」
「見えているんならよ、だったらどうしてアンタ
「えっ?」
鬼吉組の若いほうが近見に言う。
「どうして
「だ、だからそれは……私も全部が見えているわけじゃ無くて」
「それが通ると思ってんのか? 結局あんたはヤクザを嵌めたんだ。そのツケは払ってもらうぞ。おっ死んで組長に詫びを入れてこい」
補佐役の幹部の男が冷たく言い放つ。
「そ、そんな……」
近見は人をうまく使おうとして墓穴を掘った。誰も彼女を救わない。あとはもう起死回生を狙っての一か八かの特攻しかない。
(向こうはまだ4人残っている……男が【X】だってことは分かる。『王族』だけど勝利条件にはならない。高校生の男と女のどちらかが【K】でもう片方がたぶん【10】なんだわ。固まってると見えないけど
……審判台の女は12なんだから【Q】で決定。でもだったらどうして『王族覚悟』を私に使わないの? 審判台での【相打ち】が狙い? それこそ意図が分からない……でも……)
「……もういい、見てなさい。自分だけ生き残ってやるわ。『王族覚悟』!」
近見は剣を手にアイコの前に瞬間移動した。不気味さを感じながらも、「眼」で見えた情報を捨てることはできなかった。それがカーナビを盲信して右折左折をくり返すペーパードライバーと変わらない
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