第23話

 剣を手にした鬼柳がクリハラの前に瞬間移動する。

「捨て身も実らずだ。残念だったなオッサン」

「いやいや待ち人来たる、ホンマに願ったり叶ったりやで」

「何を負け惜しみ、うっ!」

 剣を振りかぶった鬼柳にクリハラが銃を突きつける。それはコーセイが持っていたリボルバーだった。

「なっ、何でお前がそんなもの!」「この距離なら外さへん。死にさらせ!」

 しかし発砲した弾は見えない壁に阻まれ跳ね返された。

「チッ、やっぱりアカンか。ルール違反やからのう。でもまあ、そのオノレの晒した醜態ブザマで今日のところは我慢したるわい」

 鬼柳は尻餅をついたうえに失禁もらしていた。「こ、このてめぇ!」と叫んでも今さら恥の上塗りでしかない。

 「強面のメッキが剥がれよったな。ええモン見してもろたわ、ひゃっはっは……がっ!!」

 豪快に笑うクリハラだったが、次の瞬間に稲妻がその身体を貫く。グラリと後ろ倒しにそのまま審判台から落ちていく。

「て『天罰』か? と当然だ、馬鹿野郎め! 俺が勝ったんだ……ハハッ、俺が……うっ!」

 四つん這いで荒い息を吐く鬼柳の首に剣が突きつけられる。

「まあそうだな。そうだがお前も笑っていられる状況じゃないぜ? これからオレに殺されるんだからな」

 鬼柳の後ろに立っているのは瞬間移動したコーセイだった。


「何だお前、どっから来やがった!」

「聞こえてなかったか? ならもう一度言うか?『王族覚悟』だ」

「何を言ってやがる、お前は……嘘だろ? お前は【10】じゃなかったのかよ!」

 鬼柳は振り返ることもできず冷や汗をかいている。現実が受け入れられずパニックになっている。 

「なるほどな。あの女はひとり一回・・・・・しか見れないのか。クリハラが死んだことでオレが成り上がったのが分からなかったんだな。教えてくれて・・・・・・ありがとうよ」

「ふざけんな! こんなことが……ただじゃすまさねえ……」

「最期まで救えねえな。だがオレを恨むのは筋違いだぜ。人任せにした自分を恨むんだな。アディオス、小悪党ピカロ

「ちくしょうが! あのクソ女……この俺を騙しやがった……近見ぃぃ!」

 恨みのこもった形相で近見を睨んだまま、鬼柳はコーセイに首をはね飛ばされた。


 鬼柳が紫の炎に包まれているのを見た近見も動揺を隠せない。

(ど、どういうこと? 確かにあの男は【10】だったのよ? でも今は見えない……それは『王族』になったってことよね? じゃああの男も鬼柳と同じ【X】だった? じゃあ【10】は別にいるってこと? 人数が合わないじゃない!)

 近見は【J】の飯野が羽黒に殺されたことで、早い段階から鬼柳を『王族』と見做していた。それが見落としの原因だった。そしてここに来ての致命的な計算違い、グレンツェン側の立て直しは至難の業だ。


(フォルティス)

A● 2○ 3● 4● 5● 6● 7○ 8● 9○ 10◯ X○ J● Q○ K○


(グレンツェン)

A● 2● 3● 4○ 5○ 6● 7○ 8○ 9○ 10◯ X● J● Q○ K●

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