第19話
3年前、クリハラは娘のキヨカを鬼柳に殺されていた。
当時半グレの頭だった鬼柳は、ドラッグや覚醒剤を売りさばき薬漬けにした女に売春をさせて荒稼ぎしていた。それを見過ごせなかったクリハラが追い込んで潰した。
しかし鬼柳がクリハラと敵対する別の組に泣きついたことで対立は抗争に発展し、バックを得た鬼柳は勢いづいて、キヨカを攫いクリハラに降伏と身代金を要求してきたのだ。
クリハラに金を用意することはできたが、降伏は組織の上の指示で「待った」がかかる。実行犯の鬼柳よりも後ろにいる敵の幹部の首を取る目論見だった。
その結果キヨカは見殺しにされる。抗争には勝ったものの、鬼柳は包囲網の隙を突いて海外に逃亡した。そして組織を見限ったクリハラは望んではぐれ者となり、『人食い虎』とあだ名されるようになった。
「まさか忘れたとは言わせんで、このド外道が!」
「執念深いオッサンだな。だがあのとき送った娘の指はあいつが自分で切り落としたんだぜ? クスリ欲しさによ。
「ヘラヘラ嗤っていられるのも今のうちや。お前だけはこの手で殺さな気が済まん。覚悟せえよ!」
「意気込むのは勝手だがここは【ゲーム】の世界だ。ルールがあることを忘れてんじゃねぇぞ」
「知るかそんなもん!」「待て待て、クリハラ」
コーセイがチンピラに指示してクリハラを鬼柳から遠ざけさせる。
「ここは大事なところだからちゃんとしておこうや。【3人賭け】のルールはどうなってるんだ?」
「別に何も? 【1人賭け】と特に違いは無いはずだぜ?」
鬼柳は情報を開示する気はないようだ。コーセイが知らない罠がしかけてある可能性も否定できない。
「『チーム』分けは途中で変更しても構わないな?」
「駒が減っていくなら再編成は当然必要になるだろうよ」
それを受けてフォルティス側も『チーム』を組み直す。様子見の『先発』、それに続く『中堅』、『大将』、そして作戦を考えグレンツェン側の『王族』を見つける『参謀』と役割による暫定のオーダーが決まる。
「それで、何で先生はオレと組むことにしたんだ?」
『参謀』のコーセイの隣にはアイコが立っている。
「面白そうだからじゃ駄目かしら? それに『王族』が一人でいたら真っ先に狙われるわよ」
「オレはそんなご大層じゃねえよ」
「どうかしらね? タバコ1本ちょうだい」
「何だ、それが目当てかよ」
少しの間二人はタバコを楽しんだ。
「そういえば先生も
「そうだけど私のはユキたちとは別の理由よ」
「借金とかじゃ無くてか?」
「学校のプールしていた裏金を盗もうとしてトールに見つかっちゃったのよ」
「犯罪奴隷じゃねえか! 病気の家族のためとかじゃなくて?」
「純然たるお仕事よ」
「やれやれ。タヌキかと思ったらとんだ女狐だな」
「ふふっ、曲者どうし仲良くやりましょうよ」
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