1-3
それっきり、彼とは出会うことが無くって、夏休みのお盆の時、姉ちゃんが
「真織 花火 一緒に行かない? 史也がさー 浜でやる花火の時に庭でバーベキューやるから おいでよーって ねぇ ねぇ 浴衣着て行こうよー」
「ふ~ん 行かない ここの浜からでも見えるよー カイと見るの」
「あっ そう あのね
「そんなの 偶然よー バッカみたい! っていうか 気色わるーぅぃ」
「ふ~ん つまんない子っ カイのウンコ ちゃんと面倒見るのよ!」
そして、その日。姉ちゃんは浴衣を着せてもらって、お化粧もしていたみたい。
「真織も浴衣着るかい?」と、お母さんが言っていたけど、私はタンクトップに体操ジャージのハーフバンツだった。
「いいよー このままでー」
「そんなで 外に出たら 蚊に刺されるよー」
「いいの! スプレーするから」
「あっ 駅で伊織利君待ち合わせしてるんだー お母さん お化粧 バッチリ?」
「ええ 可愛いわよー」
と、姉ちゃんは出て行ったけど、私はカイにブラッシングをしていて、ふと・・・駅で待ち合わせ? ・・・ええー もしかして と 。 伊織利君なんて 私 知らない人だ。だとしたらー あの人 と。私は、ブラシを投げ出して、駅に走った。
だけど、電車はもう出たとこで・・・ドァのガラス越しに楽しそうに笑っている姉ちゃんと・・・確か・・・彼の陽焼けした横顔が見えていた。
あーぁ 私ってバカなんだよねー 間が悪いんだよねー 昔からー 中学校の入学式の時も そう 急にお腹痛くなって 電車に乗り遅れて 式に遅れて 恥ずかしかった 終わっていたんだものー お母さんには嫌味を言われた。何で、姉ちゃんに誘われた時、素直に行くって言わなかったんだろうと、後悔しながら、カイと一緒に離れた花火を見ていたのだ。
姉ちゃんが帰ってきた時、私は遠慮がちに聞いてみた
「楽しかった?」
「うん 肉も美味しかったし 伊織利君に家まで送ってきてもらったの あいつ 優しいんだよー まぁ ウチには史也が居るけどねー」
「えっ なんで 言ってくんないのよー」
「なにをー???」
「うっ まぁ その 伊織利君って 前から 居た?」
「中学の時 越してきたんだって それから明智学園 高校から史也と同級生で同じ方面だからって、仲良くなったらしいよ」
「ふ~ん 伊織利 苗字 なんだっけ?」
「えーとっ 縦帯 変な名前だよね どうして?」
「うっ まぁ 知らない人だなぁーって 家 山の方?」
「らしいよ 変な虫が多いんだって それに、熊、サル、鹿、狸なんかが時々、庭をうろうろしてるんだってー 大袈裟よねー」
そんなこと言ったって、私は、ここに越してきた時、お母さんと30分程山を歩いて滝を見に行った時、側の岩の上から私を見詰めている猿が居たんだものー きっと私に襲い掛かるつもりだったんだわー それに、この前も、国道で大きな鹿が横たわってるのを見たんだからー 死んでるのに、眼は私を見てたの 姉ちゃんはノー天気なのよ。家と駅の行き帰りだけだから。
でも、情報を仕入れられた。明智学園の高校2年生。縦帯伊織利。やや姉ちゃんの好みだけど、多分 姉ちゃんには史也君が居るから、競合はしていない。中学に入る時に、こっちに越してきた。それだけ!。肝心の彼女が居るのかどうかはわからないのだ。
でも、手繰り寄せる糸の端は掴んだと思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます