第1話

20〇〇年4月


桜の花が鮮やかに空を舞って心地よい気温に楠木春樹は自身が務める執事紹介所

「松田執事紹介所」の窓を開けグーっと伸びをした



春の香りを体いっぱいに吸い込みゆっくりと息を吐く

春樹はこの時間が一番好きだ

そんな風にリラックスをしていると扉が開き

紹介所の所長である松田浩太が

「楠木くん、せっかくのんびりしているところ悪いが紹介依頼が来ていてね、

 このお屋敷に今から行ってくれるかね。」

そう言いながら松田は春樹に一枚の封筒を渡した。


春樹はその封筒を受け取り中身を確認するとため息をひとつ吐き

「俺はパスで。こんな何かありそうなめんどくさいところになんて務めたくありません。松田さんが行けばいいじゃないですか。」


その言葉を微笑みながら聞いていた松田は

「いやぁ、私はもういい歳だしこういったところには君みたいなタイプが適任だと思ったんだがねぇ...そうかそうか、そんなに嫌なら他の方に頼むかねぇ。まあ他の執事は今みんな出払っていて頼めたとしてもその子の体調が今度は心配になってしまうねぇ...」



.......このジジイそんな風にいったら俺が悪者みたいじゃないか

断りづらい雰囲気を作りやがって



春樹は心の中で悪態をついた

まあ実際松田の言うことは間違いではない。

昨今執事という存在は減少しておりそれとは反対に執事を紹介してほしいという家が増えていて人手不足なのだ。

そんな中暇を持て余しているのは春樹しかいないだろう



「分かりましたよ。行けばいいんでしょ。行けば。ただし、給料はたんまりもらいますからね」


その返事に松田は満足したのかまた穏やかに微笑み

「楠木くんならそういってくれると思っていました。それでは、よろしくお願いしますね。今回も“しっかりと”務めてきてくださいね。」


春樹は思わず舌打ちをしたくなったがそれをしてしまうと自分のクビが飛びかねないのでそのどうしようもない気持ちを桜の花を見て紛らわせた


部屋を出ていこうとする松田が思い出したように

「あ、そうでした。その封筒とは別に楠木くんの執事カバンの中に今回行ってもらうお宅の情報を入れておいたので必ず確認してくださいね。

少し“特殊”なので。」


今日一番の笑顔を見せながら扉が閉まった



「チッ、“そういう”案件かよ。引き受けた後にそんなこと言いやがって。」




これから先に待ち受けていることのめんどくささを感じながら春樹は執事カバンに手を伸ばした。



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