九章 パラグラフリーディング
別府は上野がどうして捕まったのかをきいた。上野は書院から書物をもち出そうとしていたらしい。別府は押収された書物から蛇崩町絵図と五人組帳に注目した。地下牢におりて、上野に蛇崩町絵図と五人組帳を突きつけた。
上野は事件当日、人垣のなかで発見されていた。上野の現場不在証明だった。氾濫が起きたとき、木戸番はふたりしかいなかった。人垣のまわりにいた見張りは、五人組帳から選ばれた町民だった。応援に来た夜警は、町人たちと人垣のなかを横切っていたが、別府はそのひとりが上野の変装だったと指摘する。
途中から人垣に合流すれば、殺したあとでも間に合うのである。
しかし、上野は反論する。紛れこむために使ったと思われる石階段は、濁流によって壊れていたのだ。石階段が使えなければ、途中から合流できない。またもや、成立しなかった。
別府のアリバイ崩しは無意味かと思われた。
しかし、未堂棟は上野が石階段の状態を知っていたこと自体がおかしいと指摘する。
別府は未堂棟の意図を探った。石階段のそばに井戸があることに気づいた。木樋図を見る。大村家は行人坂におくる上水をとめていたらしい。
別府は上野が涸れた井戸のなかに身体を隠し、人垣が来たときに這いあがったと仮説を立てる。牢内にいる上野には、反論はできなかった。
井戸を調べるにしても、外は真っ暗だった。
別府は井戸に見張りを立てて、翌日に調べることにした。しかし、未堂棟は座敷牢から離れようとしない。まだ、質問があるらしい。未堂棟は上野に被害者の佐々木のことをきいていた。
上野の話によって、佐々木を殺したと思われる木刀は、土間になかったことを知る。この問答の直後、未堂棟は倒れてしまった。
別府は未堂棟を休ませるために、宿屋へともどるのであった。
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