二章 パラグラフリーディング

 佐々木は別府の追求に参っていた。そのとき、偶然にとおりかかった瑞木新七に声をかけた。日食を教えてもらった水屋である。瑞木は殺害された作間藤三郎の血縁者だった。

 瑞木を交えた会話によって、別府たちはあたらしい事実を知ることになる。大村家は水騒動のあと、被害者の血縁者を雇っていたのだ。瑞木新七は水屋、炊馬経子は女中、作間政信は新田作り、上野左衛門は万屋を営んでいた。大村家は四人に仕事をまわしていた。

 この新事実は大村家に、厳しい処分を追加することをむずかしくしていた。もしも大村家を改易した場合、作間家の親類にふたたび、金銭的な被害を与えることになる。奉行所の指針とはことなるため、強い処分を与えられなくなった。

 別府はとりあえず、翌日の正午に大村昌村と面会することをとりつける。この話をしているあいだ、日食は終わっていた。

 佐々木は被害者の血縁者である炊馬経子を呼んだ。経子に宿屋まで案内してもらうことになる。別府は道すがら、大村家の印象を、きくことにした。

 経子からは大村家の悪評をきくことはできなかった。

 しかし、進展はあった。彼女の口から想像もしていなかった話が語られたのだ。被害者の藤三郎は殺されるまえ、彼女の長屋をたずねていたらしい。藤三郎は変死体が続出しているという話をしていたのだ。

 事後調査に来た蛇崩町に、不穏な空気が流れはじめていた

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