十三参の神隠し
立志式の事を考えると憂鬱で仕方なかったが……そんな私の気持ちを知ってか、母が立志式の前の休みに買い物へ連れ出してくれた。行った先は小さなアーケード街だ。母に服を身に行こうと言われたが、私は本屋に行きたかったのでそう伝えると
「じゃあ、お母さん服見てるわ。あんたも欲しい本見っけたら後から来な」
そう言って返されたので1人本屋へと向かった。私は立ち読みしだすと長く、母は本をあまり読まないので別行動になるのは何時もの事だ。
何か面白い本はないかと漫画の棚から歴史書の棚まで見て歩いたが、なんだか興味を惹かれるものはあるのに手に取ろうと思えなかった。そこで、ふっと理由は未だに解らないのだが唐突に七五三の時に行った神社にもう一度行こう。
そう思ったんだ。アーケード街から神社までは距離が近く、片道15分くらいで行ける。
私は、直ぐに戻れば問題ないだろうと母には神社に行く事を告げずに1人で向かった。2月の初旬だったが、その頃は温かい日が続いていて雪も疎らに残っている程度の歩道を鼻歌を歌いながら真っすぐ神社へと向かい歩を進める。
赤い鳥居を潜り、あの石段を今度は1人でゆっくり上った。そして、石段の上に着くと見慣れないものが置かれていたんだ。
四角い気の枠組みに嵌められたしめ縄の様な物で出来た輪っか……何だろうと思いまじまじ見ていると、横に説明書きの様な物が置かれていた。読んでみると、それが【茅の輪】と言うらしい事が書かれていて曾祖母に聞いた事があるなと思い出す。
そして不思議に思った。【茅の輪】は、夏越の祓えに1年の前半に身に溜まった穢れを落とし夏を元気に乗り越えるよう神さまに祈る為のものだと曾祖母は言っていた筈なのに。
何故、2月に【茅の輪】が置かれてるのかっと……
ちなみに、これは後から知ったのだが冬から春の変わり目の季節である節分にも厄除けや病除けを願う【茅の輪】くぐりが行われる事があるのだと言う。ただ、当時はそんな事まったく知らなかったので時季外れだけど厄除けの【茅の輪】があるなんて自分は運が良いと本気で思っていた。
立志式の事で気が滅入っていた事もあり、いじめや家族の事も含め身の回りの厄を少しでも良いから軽くしてほしいと願いながら【茅の輪】をくぐったんだ。本来なら拝殿の方を向いて抜けなければならないのだがその時の私は間違えて、鳥居の方に抜けてしまった。
正面に鳥居が見えたのだが、様子が奇妙しい。鳥居の向こうが、真っ白な霧で覆われている。
と言うより、正確には神社の周りを取り囲むように霧が発生していた。さっきまでそんな事なかったのに、驚いて辺りを見渡すと七五三の時と同じで自分以外誰の姿もない。
それどころか、異様な程に静かだった。流石に不安を覚えた私は、拝殿の方を振り返った。
すると、拝殿の前に置かれたお賽銭箱の上に誰か座っているのが見えたんだ。その人物は黒い着物を着た男性の様で、煙管を咥えている様だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます