第12話 ミユ奪還作戦


俺達は国外の雪原に馬車と共に放り出されて、己の無力さを噛み締めていた。


だが、このまま諦める気はさらさらない。


ミユを失いたくない。だから無力なままでは終われない。俺はがむしゃらに帝都の方向を目指して歩き出した。


 


「待ってくれクロード!!ミユを助けるにしても策も無しに行けば死ぬだけだ!!」


 


「うるせェ黙れ!!!ここにいる間にもミユは殺されてるかもしれねェんだ………!!!俺はたとえ死ぬ事になったとしてもミユを一人にはしねェ……………!!!!」


 


アインの静止を振り切り歩き続ける。


その時リゼルが俺につかつかと近付いてきて、頬を張られた。


 


「!?」


 


「ミユさんを大切に思っているのが自分だけだとでも思ってるんですか…………?私だって、アインだってミユさんを助けたいんです…………!!!当たり前じゃないですか………」


 


ここに至り、自分の馬鹿さ加減にようやく気付いた。俺は完全に頭に血が登っていて、周りが見えていなかった。


 


「悪かったよ……………」


 


一度冷静になり、3人でミユ奪還作戦を立てる事にした。


 


 

氷雪の国の外れ、千年雪の霊峰。凍鎧竜の住処であり、あらゆる来訪者を拒絶する天然の魔境。


俺達が考えた作戦は凍鎧竜の力を借りてクリスタルパレスに乗り込みアインとリゼルは凍鎧竜の背から支援攻撃、俺とアリアで強行突破一択。うむ、実に脳筋シンプル


幸い、アリアのユニーク魔法があれば衛兵を無力化するのは容易い。


だが問題は、どうやって凍鎧竜の協力を得るか?という事だ。


 


「とりあえず呼んでみましょうか?」


 


3人で顔を見合わせる。そして、声を揃えて凍鎧竜に呼びかける。


 


「凍鎧竜さ〜ん」←リゼル


 


「いでよ凍鎧竜!!そして願いを叶えたまえ!!」←アイン


 


「凍鎧竜…………出て来いや…………!!!!」←俺


 


声を揃え…………揃え………、全然揃ってないし何よりグダグダだった。心なしか、なんかさっきより寒くなった気がする。


……ふざけるのはもうやめにしよう…………


 


「反応がないのでもう一度呼びましょう」


 


リゼルがそう言った直後、


 


『その必要はない』


 


吹雪と共に凍鎧竜が降臨する。


 


『まったく貴様らは我の寝床で騒ぎおって…………いったいなんの用…………って、1人少なくね?あの呪詛喰らいの狐亜人はどうした?』


 


俺達は凍鎧竜に事情を話した。


 


『ローレンス…………!!あやつが記憶として生きておったのも驚きだが、呪詛喰らいだからという理由で国を救った功労者を処刑などと…………愚か者がァァァァァァァーーー!!!』


 


凍鎧竜、激怒キレる。怒り心頭の凍鎧竜は、俺達が戦った時とは比べ物にならない迫力で流石神獣………と、思わず納得してしまった。


 


『我の背中に乗れィ!!カチコミじゃァァァァァァァ!!!ローレンスのアホが………目に物を見せてくれるわ!!』


 


凍鎧竜の協力を得て、俺達はクリスタルパレスに向けて出発した。

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